猫の多頭飼育崩壊、現場に駆けつけたスタッフが見たものとは…目を覆いたくなる惨状、なぜこうなった?

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

猫や犬などを面倒が見切れないほど家の中で飼育をし、遂には収拾が付かなくなる状態を「多頭飼育崩壊」と呼びます。多頭飼育崩壊を引き起こす飼い主は老人が多く、認知症を発症しているケースも。

忘れてはならないのが、多頭飼育崩壊を起こす飼い主は、元々猫や犬を可愛がっている人だったという点。これが多頭飼育崩壊の問題解決を難しくしている一因です。

事件発覚…猫の状態は?

2022年4月15日、和歌山市で保護猫活動を行っている市民グループ「城下町にゃんこの会」へ一本の連絡が入りました。以前、城下町にゃんこの会から里子に出した飼い主さんの知人女性からです。実家が猫屋敷状態になっており、手がつけられないといいます。急いで代表の奥康子さんとスタッフが現場へ駆けつけました。



そこで奥さんたちが目にしたのは、とんでもない光景。外観は一般的な庭付き2階建て住宅なものの、中に入ると壁も天井もない状態。家の躯体がむき出しです。そこに数えられないほどの猫がおり、ほとんどが人間を見るのが初めてのよう。部屋の片隅には、ボロボロになり壊れたキャットタワーやおもちゃが転がっています。

一室だけまだ綺麗な部屋があり、そこにはレコードプレイヤーなど趣味の道具が置いてありました。どうやら飼い主の男性の部屋のようです。しかし、ここで寝泊りはしておらず、自営業の店で普段は暮らしていました。



飼い主の突然死…猫が増えた理由

実は城下町にゃんこの会へ連絡がいったのは、飼い主の男性が突然死したため。娘さんが片付けに実家へ赴いたところ、多頭飼育崩壊が発覚しました。

娘さんが結婚で実家を出た10年前までは、8匹の猫がとても大切に飼われていたとのこと。ところがこの後、飼い主の男性を取り巻く環境が大きく変化。

最も大きく環境を変えた原因は、同居していた実母の他界です。認知症を患っており大変な介護でしたが、とてもかいがいしくお世話をし近所でも評判。しかし、娘さんが嫁いだ3年後に実母が他界したため、この生活が終了してしまいました。

その後、猫が増えていったと娘さんは見ています。

男性自身に認知症の傾向はなく、自営業の仕事も以前と変わらず打ち込み、趣味の集まりにも顔を出していました。周囲の人は誰も自宅が猫屋敷になっているだなんて、予想だにしていません。

捕獲機を20台設置、さらに暗視カメラも

城下町にゃんこの会は娘さんからの聞き取りにより、おおよそ20匹の猫がいると推察。そこで捕獲機を20台設置しました。夜間にも対応できるよう暗視カメラも用意します。

順調に捕獲は進むものの、捕獲のショックで妊娠している猫が出産をし、子猫を踏みつぶしてしまう惨劇も起こってしまいました。他にも妊娠している猫は6匹、1匹は出産をし、5匹は堕胎手術を受けることに。

この状況に、城下町にゃんこの会代表の奥さんは不審に思いました。これだけ妊娠できる猫がいるにも関わらず、家の中にいる猫の数が少ない。恐らく生きられなかった子猫が多かったのだろうと。多頭飼育崩壊現場では、産まれたばかりの子猫は恰好の御馳走です。共食いの餌食になった子猫は多いでしょう。

数日にわたる捕獲で、合計27匹の猫が保護されました。この猫たちは城下町にゃんこの会だけでなく、和歌山市動物愛護センターにも分けられ新しい飼い主、預かりボランティアを待っています。



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