元祖新快速をリスペクトした走る応接室 国鉄の粋が詰まった117系 登場から40年以上も衰えぬ人気

新田 浩之 新田 浩之

日が経つにつれ、JR西日本の117系に注目が集まっています。ゴールデンウイークには117系を使った大阪~倉敷間のツアーを実施。京都鉄道博物館では5月12日から17日まで117系トップナンバー編成を展示していました。特急列車でもない117系に人気が集まるのはなぜでしょうか。

 画期的だった2扉・転換クロスシートの117系

117系は片側2扉・転換クロスシートの近郊型電車です。つまり特急列車ではなく、基本的に快速列車や普通列車に使われます。現在の主な活躍場所は湖西線や草津線、琵琶湖線(東海道本線)。また2020年にデビューした長距離列車「WEST EXPRESS銀河」も実は117系です。

117系が人気車両である理由のひとつには華々しい歴史が挙げられます。117系は1980(昭和55)年に京阪神間の新快速専用電車として登場。117系登場以前の新快速電車は直角シートのボックス型であり、並行する阪急や京阪の特急電車と比較すると見劣りしました。そこで、当時の国鉄大阪鉄道管理局が猛プッシュして実現した車両です。

117系の最大の特徴は4列(2列+2列)の転換クロスシートです。当時の国鉄において、特別料金不要な近郊型車両で転換クロスシートを採用したことは画期的な出来事でした。この後、関東では転換クロスシートの185系特急電車が登場しましたが、こちらは特急運用時の際は乗車にあたり特急料金が必要でした。

実際に座ってみるとシートや壁紙も茶色なので、まるで昭和時代の応接室にいるよう。現在の鉄道車両やオフィスでも味わえない昭和レトロが味わえます。

華々しく登場した関西エリアの117系は東は滋賀県、西は兵庫県まで100km/hを超すスピードで大活躍。現在も湖西線で活躍する117系に乗ると、唸りをあげながら往時のスピードで疾走します。JR西日本における新快速の運用は1999(平成11)年に終了しましたが、1990年代以降は福知山線や奈良線で「快速」運用に就いていました。

 塗装と希少性もポイント

オリジナル塗装も人気の理由の一つと言えるでしょう。デビュー当時、緑色と黄色が多かった近郊型電車の中でクリーム地に茶色帯という姿で登場しました。これは戦前に走っていた新快速の元祖「急電」の専用車両の塗装を意識したものと言われています。

その後は地域カラーを採用、京都・滋賀地区は抹茶色、岡山地区は濃黄色に変更しました。しかし、現在もオリジナル塗装は根強い人気があり、グッズで見られることもしばしばです。

三つ目の理由は希少性です。117系はJR西日本・JR東海のみの配属となり、関東ではお目にかかれない車両です。なおJR東海所属の117系は全て廃車になっています。

いずれにせよ117系の人気は衰えるどころか、人気はますます高まっているのが現状。今後もローカル輸送だけでなく、臨時列車にもより積極的に使われることでしょう。

 後輩車両に引き継がれなかった設備は?

ところでエポック的な車内レイアウトで有名な117系ですが、現在の車両に採用していない設備もあります。それが片側2扉で、JR発足以降に誕生した221系・223系・225系は片側3扉です。全国的に見ても3扉・転換クロスシート車両が標準です。

2扉から3扉に変わった理由はラッシュ対策です。一般的に2扉だと乗降に時間を要してしまいます。現に117系のライバルにあたる2扉・転換クロスシートの阪急6300系も特急停車駅が増加すると2扉が問題視され、後継車9300系は3扉になりました。

117系は3扉改造は行われませんでしたが、1990年代にラッシュ時対策として扉付近をロングシートになり、「300番台」を名乗っています。5月中に117系トップナンバー編成が引退することになり、少なくなる117系。同車をきっかけに鉄道車両の車内レイアウトの系譜を見ると、なかなか興味深い事実が見つかることでしょう。

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