戦地に取り残され、傷ついた犬・猫を救いたい ウクライナでさまざまな団体・個人が奮闘

新田 浩之 新田 浩之

2月24日にロシアがウクライナに本格的に侵攻し、多くの人的・物的被害が生じています。残念ながら、ペットの犬や猫も例外ではありません。現在、ウクライナではペット・動物に対してどのようなサポートがなされているのでしょうか。

 ペットフードから見るウクライナのペット事情

最初にウクライナのペット事情を知るために、紛争前のペットフード事情を確認します。ペットフードインダストリーによると、2018年におけるウクライナのペットフード市場の売上高は前年比40%増の約2億5千万ドルでした。また西ウクライナを本拠地とするペットフード大手、コルモテック社は2021年に前年比約23%増の約6万6千トンものペットフードを販売しました。

増加した背景には個人消費の増長と輸出の拡大が挙げられています。また2016年からのロシア産のペットフード輸出禁止の影響もあるとのことです。

このように戦争前はウクライナのペットフード市場は拡大していました。拡大にはいろいろな要因がありますが、少なくともウクライナ国内では飼育頭数が増え、よりペットにお金をかける世帯が増加していたことがうかがえます。このような背景を受け、国内のペットフード会社はペットフードの質が向上していることを認めています。

 傷ついたペット・動物を見つけるパトロールも実施

戦争がはじまり、多くのペットや動物が傷ついています。一方、傷ついたペットをサポートする動きもあちこちで見られます。コルモテック社は「SAVE PETS OF UKRAINE」プロジェクトを立ち上げました。同社によると毎月500トンものペットフードを犬や猫に供給することを目標にし、専用ホームページでも支援を呼び掛けています。

取り残されたペットを保護する活動は各地で行われています。たとえば首都キーウ(キエフ)にある「動物パトロール」では実際に車でパトロールを行い、無償で傷ついた犬や猫を救い、治療を施した上で、新しい住み家を探しています。

当初はキーフのアパートを中心に活動し、現在はロシア軍が破壊したイルピンやブチャでも展開しています。

同じくキーウにある「Adopt Don't Stop」は猫に特化した支援団体です。同団体のFacebookには救った猫の写真と受け入れ先を求めるメッセージが書かれています。

 個人で頑張る方も

シェルターは団体だけでなく、個人単位でも行われています。世界的に知られるようになったのはアーシャ・セルピンスカ(Asya Serpinska)さんです。

4月26日付のワシントンポストによると、彼女はキーウの北西ホストメリでシェルターを運営する77歳の女性です。シェルターには3人のスタッフがおり、管理していた約700頭の犬、約100匹の多くが生存し、そしてライオンも救ったとのこと。

もともと彼女は数学の教授で、動物愛護のボランティア活動に従事。約20年前に退職し、現在のシェルターをつくりました。ウクライナ人の友人によると、このような小規模な動物シェルターはたくさんあるとのことです。

このようにウクライナでは多くの団体、個人がペットや動物を救おうと奮闘していますが、先ほど述べた通り、多くの命が失われていることも事実です。今回紹介した団体ではホームページを通じて募金を呼び掛けています。少しでもウクライナの動物に関心がある方は、支援を検討されてはいかがでしょうか。 

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