京都を舞台に、1999年から続いていた沢口靖子(56)主演のドラマ「科捜研の女」。京の街が一望できる屋上庭園で、京都府警科学捜査研究所(科捜研)の研究員・榊(さかき)マリコ(沢口)と土門刑事(内藤剛志)が語り合うラストシーンは毎回おなじみになっていた。
府警本部という設定で、南区の国道1号沿いの積水化学工業京都研究所で撮影され続けてきたラストシーンに4月、異変があった。
「科捜研の女」は、99年の「シーズン1」から始まり、インターバル(休み期間)を挟みながらも、ほぼ毎年、シーズンを重ねてきた。昨年10月から半年間放送された「シーズン21」の最終回だった4月7日の放送。マリコや土門刑事だけでなく、日野所長(斉藤暁)や宇佐見(風間トオル)ら科捜研の仲間たちが屋上に集まってマリコを囲んだ。
長年一緒に捜査にあたってきたマリコへの思いや感謝を一人ずつが語っていく。土門刑事は23年前に初めて会った時「頑固で絶対に折れない…こんな女とは絶対一緒にやるもんかと思った」と振り返り「面と向かって褒めるのは初めてかもしれない。榊、おまえはたいした奴だ」とたたえた。
マリコは「私もつまずいたり、心が折れることだって何度もあった。でも、みんながいてくれるから、ここまで来られた」と語り「だから、今まで本当にありがとう」と結んだ。最後はカメラ目線。視聴者にも感謝を伝えるラストだった。
ネットでは「科捜研」が「今回で本当に最後なのでは」という心配や惜しむ声があふれた。確かにテレビ朝日の広報資料には「23年の集大成」と記されている。ただ、「シーズン21 最終回」とは書いてあるものの、本当の最終回とは、どこにも書かれていない。ツイッター番組公式アカウントは「またいつかお会いできる事を願ってます」と発信している。
「科捜研」は太秦の東映京都撮影所を拠点に撮影されてきた。4月8日で最終回を迎えた連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のモデルや撮影地になった場所でもある。時代劇を守ろうと映画村で奮闘したヒロインひなた(川栄李奈)や斬(き)られ役一筋の虚無蔵(松重豊)のような人たちが、時代劇にとどまらず、「科捜研」のようなドラマ作りに今も日々奮闘している。
京都に住んでいると、鴨川沿いなどで「科捜研」のロケを見た人も少なくないはず。やはり、あの光景がないのはさみしい。撮影所に残る科捜研のセットや京都の街に、マリコは再び帰ってくると信じている。=敬称略