「おうち新幹線完成!」ーーあるTwitterユーザーが自宅の和室を新幹線客室そっくりに改造し、注目を集めています。投稿主さんとJRの担当者に話を聞きました。
新幹線車内で採寸する念の入れよう
自宅に新幹線客室を再現したのは「kobaton」さん(@_kobakashi_)。秋田新幹線E6系で実際に使用されていた客室内2人掛け座席と窓枠の側パネルをJR東日本グループが運営するネットショップ「TRAINIART(トレニアート)JRE MALL」で購入。床板部分はホームセンターでそろえた木材などで自作しました。
完成後の3月23日、自身のTwitterに「家にあるE6系新幹線の座席に座ってウキウキしながら夕飯食ってる夫婦は少ないと思う」と写真付きで投稿すると、2日で2万超のいいねがつき、ユーザーからは「家!?」「すごい」「楽しそう」「これはテンションあがる」「うらやましい」「ロマンだ」「食堂車かと思った」「これで晩酌したい」などの声が上がり、拡散は現在も続いています。
反響の大きさに驚くkobatonさんに話を聞きました。
──座席はJR東日本のネットショップで購入したのでしょうか。
「そうです。座席と窓パネル共にJREモールで購入したものです。(昨年)10月の初回販売時に1つ目を、2月の追加販売時に2つ目を購入しました。2つ目の購入経緯はE6系の座席に座りながら背面テーブルを使いたかった点と、3人家族なので全員着席できたらいいなという点でした」
──自宅に新幹線車内を再現しようと思った経緯は。
「もともと鉄道車両の座席を欲しいと思っていたのですが、このE6系では窓パネルも売っており、これは床を作れば車内が作れると思ったところです。ちょうど1回目の座席購入から到着までの間に秋田出張があったため、E6系車内で座席周りなどの寸法を測ってきています。その後、時間がなくて先延ばしにしていたのですが、2回目の購入時にえいやと作りました」
──制作日数は。
「床の製作日数は正味、数時間です。途中で材料が足らなくなり、結局のところ丸一日かかっています。座席は実物同様にボルトで固定しています」
──費用は。
「総額22万円ほどでしょうか。木材で3000円ほど、床材のクッションフロアが1000円くらいでした。費用のほとんどはJREモールで購入した金額です。送料だけでも5万円になりますね」
座り心地は? 家族の反応は?
──座席で食事した感想は。
「座り心地は大変良いです。YouTubeの秋田〜東京の全区間走行音を流しながら食べていました。揺れはしませんが、出かけた気分になれました。家内はあきれていますが、座席や窓パネルの固定は手伝ってくれました」
──完成後、気付いたことは。
「雪が降るような天気だと足元が寒い点ですね。こればかりは靴下を履くしかありません。まだまだコンセントを設置したり、実車同様の枕カバーを作ったり作業するつもりです」
座席で晩酌も楽しむkobatonさんですが、ご一家の中で一番喜んでいる人がいるそうです。
「一番喜んでいるのは1歳8カ月になる娘かもしれません。いろいろ持ち込んで基地みたいにしてくつろいでいて、一番座っている時間が長いのではないでしょうか。次回、(実物の)E6系に乗るときに娘がどういう反応をするのか特に楽しみです」(kobatonさん)
JR東日本「社員一同、大変うれしく思っております」
ネット上での盛り上がりはJREモールを運営するJR東日本の耳にも届いているのでしょうか。同社担当者に話を聞くと、次のようなコメントを寄せてくれました。
「秋田新幹線の車両メンテナンスに携わる社員が、車両改造に伴って取り外した座席をそのまま廃棄するのはもったいないということではじまった取り組みです。ご自宅で楽しんでいただけて、社員一同、大変うれしく思っております」(JR東日本担当者)
Twitterには「新幹線の座席って売ってるんだ」「自分も買ってみたい」という反応もありましたが、「今後の新幹線座席の出品は未定でございます」(同社担当者)。鉄道古物については毎月、JREモールで販売しており、最新情報などは同店公式Twitterアカウント(@trainiart)で告知しているそうです。
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ちなみに投稿主のkobatonさんは、全国の貨車駅舎を網羅した書籍「探訪 貨車駅舎 かつて線路を走っていた建物たち」や、国鉄時代の車両塗色の見本帳を印刷で再現した「国鉄車両関係色見本帳+車両色図鑑」(いずれもレイルウエイズ グラフィック著、グラフィック社)の出版にも携わっています。「おうち新幹線」と同じぐらい、旅情をかき立てたれる内容です。