京都ならではの職人による、前代未聞の「仏具ガチャ」が百貨店の一角にお目見え

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 京都市中心部の百貨店の一角に、一見すると、立派なほこらのような「厨子(ずし)」が安置されています。観音開きの扉を開けると、中にはカプセルトイの自動販売機が鎮座。しかも、設置初日には僧侶が読経したとか。いったいどうなっているのか、制作に携わった僧侶や仏師に聞きました。

 カプセルトイの厨子が安置されているのは大丸京都店(京都市下京区)の6階の催事会場です。会場では京都の豊かさや美意識を紹介する催し「余白のある暮らし博」が開かれています。

 厨子を出展したのは、京都の仏具職人集団による「佛佛部(ぶつぶつぶ)」。佛佛部には京都の仏師や宮大工、漆を塗る「塗師」、仏具の装飾的な金具を作る「錺師(かざりし)」、金箔(きんぱく)を押す「箔押師(おしはくし)」が本業とは別の「部活動」として参加しています。メンバーはこれまで仏教と縁の薄かった人を対象に、自ら手を合わせるための仏像を作る「念持仏造立教室」を龍岸寺(京都市下京区)で開催しています。

 「余白のある暮らし博」では多くの手仕事製品が出展されるため、佛佛部は仏具関連の職人の仕事ぶりを見てもらおうと参画しました。きめ細やかな細工の入った金属製マネークリップや金箔の押されたピアスなどに混じって、一角に置かれているのがカプセルトイの自販機です。

 カプセルトイの自販機は以前から龍岸寺にあり、小型の仏像を授与する機械として活躍していました。今回、催事会場で気軽に仏具を手にしてもらおうと、このカプセルトイ自販機も並べることに決めたそうです。この自販機では、小さな仏像のほか、漆塗りのブローチ、錺金具を使ったキーホルダーなどをランダムで入手することができます。

 カプセルトイの自販機はおなじみの赤い外装です。薄暗く雰囲気のある会場で、そのままの色では目立ちます。そこで出展1週間前になって、職人たちが力を合わせ収納する厨子を作ることに決めたそうです。

 厨子は総ヒノキ製で高さ約80センチ。宮大工が「破風(はふ)」と呼ばれる社寺建築独特の屋根部分を制作、その下部を仏師が手がけました。さらに錺師が扉に錺金具を制作し、箔押師が金箔を施しました。

 初日には龍岸寺の池口龍法住職がカプセルトイの前で、期間中の無事と世界平和を念じ読経しました。来場者がカプセルトイを手に入れるための独自の作法も定められています。そばに置かれた木魚をたたいて厨子の前にあるりんを鳴らし、心を落ち着かせてからカプセルトイに向き合い、正面のハンドルを回すことになっています。

 設置されて以降、厨子に入ったカプセルトイは好評で多くの人が写真を撮り、購入のためのハンドルを回していくそうです。

 佛佛部部長で仏師の三浦耀山さん(48)は、「わずか1週間で立派なお厨子ができた。今後はカプセルトイ自体も漆で塗りたい」と意気込みます。

 設置は21日まで。1回2千円で専用コインの購入が必要です。

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