脳卒中の後遺症でよく見られる「手足のつっぱり」リハビリ以外の治療方法は 医師が解説

ドクター備忘録

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 脳卒中によって起こる身体的障害の一つが半身麻痺です。特に日常生活に支障を来たす手や足の過緊張について、治療方法を吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――脳卒中の後遺症には、一般的にどのような症状がありますか?

最も頻度が高いのは半身麻痺ですね。脳は左右の「半球」というものに分かれていて、左の脳は右の手足を、右の脳は左の手足を動かしています。左右どちらかの脳に障害が起こることによって、体の片側が麻痺している状態です。

――半身麻痺の患者さんに行う治療は、やはりリハビリですよね。

リハビリを続けていると手足のつっぱり(痙縮)が強くなってしまう方がいるのです。その場合は、症状を和らげる注射薬を打つボツリヌス療法も併せて行うこともあります。

――痙縮とは、具体的にどんな症状ですか?

脳卒中を起こすと脳からの指令が適切に伝わらず、神経が過剰に働いて筋肉が強く収縮することがあります。すると手首や肘が曲がり、肩も内側に入って体が強く縮こまったような状態に。手指が握ったままで開こうとしても開きにくかったり、足先が足の裏側の方に曲がってしまったりといった症状も見られます。一方で、自分の意志と関係なく勝手に動いてしまう場合もあります。

――患者さんご本人にとってはもどかしく辛い症状ですね。

そうですね。手足のこわばりによって体のバランスを崩し、歩くのに支障が出ることもあるのです。そのため、リハビリとボツリヌス療法を同時に行っていきます。

――ボツリヌス療法は、美容外科などでも聞く治療方法でしょうか?

美容外科ではしわ取りなどで用いられています。ボツリヌス菌が作り出す天然のタンパク質(ボツリヌストキシン)は、筋肉をこわばらせている神経の働きを抑える作用があるのです。そのため、ボツリヌストキシンを注射することで過度な筋肉の緊張を和らげられるというわけです。

――ボツリヌス療法は保険が適用されますか? また、一度打てば効果は続くのでしょうか。

保険がきく治療です。注射の効果は2~3日目から徐々に現れ、通常3~4か月持続します。この間、リハビリも積極的に行って筋肉の状態を改善していきます。ただ、どうしても次第に効果は薄れてきてしまうので、3か月おきなど年に数回注射を受けている患者さんが多いですね。リハビリと並行して治療を続けていくことになります。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科

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