昭和の懐かしスポット・オートレストラン 深夜の神戸の臨海部にその名残を見つけた 

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 オートレストランをご存知でしょうか。年配の方には懐かしい響きかもしれません。自動販売機がずらっと並んだ、めくるめく真夜中のパラダイス。しばらく前からどんどん姿を消して、いまではもうほとんど見かけることがなくなりました。

モータリゼーションとともに栄えた、深夜ドライブのオアシス

 ロードサイドの絶滅危惧種として、大規模なドライブインと並んでいま数を減らしているもののひとつがオートレストランです。オートスナックとも呼ばれた、二十四時間営業の無人店舗ですね。

 モータリゼーションの発展と共に、昼夜の別なく国道をクルマが行き交うようになった時代。その頃はまだいまのようにファーストフードのチェーン店もなく、ファミリーレストランなんていうものも見かけず、特に深夜に移動するトラックドライバーなどが休憩したり食事を摂ったりする施設があまりありませんでした。

 これはそもそも世の中全般のことなのかと思いますが、昔はみんな「夜は寝ていた」という印象があります。テレビもラジオも、深夜には深夜らしい番組を流してましたよね。普通の人は寝ていて、長距離のトラックドライバーとか受験生など一部の人達が起きていて、彼らに向けた深夜ラジオの番組が用意されていた、というようなそんな気がするのです。いや、筆者が感じたことで正しいかどうかはよくわからないのですが。

 言うまでもなく深夜は昼間よりも人が動いていません。なので、店を開けていても昼間と同じようにたくさんのお客さんは見込めないわけで、人件費を掛けて二十四時間営業をするのは難しいですよね。そこで登場したのが無人店舗、オートレストランでした。

自動販売機の進化が無人レストランを生んだ

 自動販売機というとポピュラーなのは、なんと言っても飲み物でしょう。1969年にUCCが世界初の缶入りミルクコーヒーを発売して以来、自動販売機というと缶コーヒーというくらい当たり前というか、ドライブやツーリングの定番になりましたよね。しかし飲み物だけでは「レストラン」は名乗れません。当然、食べ物の自動販売機が必要です。

 たとえばパンとかカロリーメイトとか、そういう乾き物である程度保存が利くもの、調理や温めの必要がないものの自動販売機は難しくないでしょうし、実際ごく普通に見かけます。サンドウィッチやおにぎり、ちょっとしたお弁当も含めて。これらでもおなかはふくれますし、食事と言えなくもないでしょう。でもこれで「レストラン」はちょっと「これじゃない感」がありますよね。やっぱりなんか温かいものが欲しいですよね。

 比較的初期に出てきたのは給湯器の付いたカップ麺の販売機でした。カップ麺は保存が利きますし、お湯もカップ式のコーヒーの販売機より簡単そうです。そして1970年代以降登場してきたのが食品自動調理販売機。うどんの自動販売機です。インスタントじゃないうどんが、お椀に入って出てくるのです。

 「レストラン」と言いきってしまうのもどうかと思いますが、一気に食堂っぽくなりましたね。

 他によく見かけたのはハンバーガー。箱に入った熱々の、やや小ぶりなハンバーガーがことんと出てくるものです。あと、筆者は実際に見たことがないのですが、レトルトのカレーライスの自動販売機もあったようです。

いまも残るレトロなうどん自動販売機

 オートレストランは1970年代から1980年代の初め頃にかけてよく見かけましたが、その後ファーストフードやファミリーレストランが深夜営業するようになって、またコンビニエンスストアも増えて、さらには高速道路網の発達で深夜の国道の交通量も少なくなってくると、一気に廃れました。しかしいまでも懐かしく思うファンも少なくないらしく、生き残った一部のオートレストランの情報はネット上で話題になっています。

 また、もう既に製造されていないうどんの自動販売機なども、いろいろ頑張ってメンテナンスされて現在も稼働しているものがあります。その中の一台が神戸市東灘区にあると聞いて、懐かしさのあまり深夜、バイクに乗って食べに行ってみました。芦屋から東灘へのシーサイドの橋を渡って、ほど近い場所です。

 昔よく見た薄いプラスチックのお椀の中、生タイプのうどんと丸い天ぷらが実に素朴でノスタルジックな味わいです。

 そうそうこれこれ、こうやったよなあと、ひととき昭和の深夜の思い出に浸りました。

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