ビニールハウスに子猫が1匹
りんごちゃん(2歳・メス)は、花の生産業者のビニールハウスの中にいた。どうやら母猫が育児放棄したようだった。生後2ヶ月にも満たないようで、まだキャットフードが食べられず、ミルクしか飲めなかったという。
2020年6月、たまたま集荷に訪れたトラックドライバーがりんごちゃんを発見して保護したが、育てられないため知り合いに保護してもらったそうだ。その保護主は、なぜかいつも保護しないといけないような猫に出会うらしく、猫を保護しては譲渡していたという。
この子だ!
大阪府に住むTさんは、猫のはなちゃんを飼っていた。17歳のシニア猫だったので、若い猫を迎えたら活力が戻るのではないかと考えていた。たまたまりんごちゃんの里親を募集しているチラシをFBで見て、会ってみることにしたという。
「はなにそっくりのハチワレ猫で、『この子だ!』と思い、すぐに保護主さんに連絡しました」
りんごちゃんには何人も里親希望者が現れたが、引き取る直前に「やっぱりいらない」と言われたり、家庭の事情で引き取れなくなったと言われたりした。しかし、縁あってTさんが引き取ることになったという。
対面したら「フーッ」、「シャー」とご挨拶
2020年1月、りんごちゃんがTさん宅に来た。最初は怯えて、毛を逆立て、「うーーーっ」と唸っていた。
「あどけない顔で唸っても、全く迫力がありませんでした(笑)はなが高齢ということも考え、しばらく別室で過ごさせました」
最初の数日はごはんも食べず、トイレもしなかったが、そっと部屋をのぞくと和室の梁に登っていて、Tさんはいらずらっ子の片鱗を見た気がして心が弾んだ。
はなちゃんは警戒するような素振りも見せたが興味津々で、りんごちゃんがいる部屋の扉を少し開けておくと、隙間からじーーーっと見つめていたそうだ。
はなちゃんとりんごちゃんを対面させると、お互い「フーッ」、「シャー」。老いたといってもはなちゃんは女帝並みのの迫力があったので、りんごちゃんは怖かったのかもしれない。しかし、しばらくすると距離が縮まり、同じベッドで寝ることもあったという。
モフモフが足りない!と多頭飼い
りんごちゃんははなちゃんから教育的指導をビシバシ受けて育った。そのため、甘噛みをしてもきつく噛まず、引っ掻くこともなかった。1年後にTさんはマンチカンの女の子、うどんちゃんを迎えると、うどんちゃんはりんごちゃんのことを追いかけ回して「遊ぼう、遊ぼう」と誘った。りんごちゃんはうっとうしそうな素振りを見せることもあったが、甘えさせてあげていたという。
「2021年3月、はなが亡くなったのですが、りんごのおでこにハゲができたんです。猫もストレスを感じて禿げることがあるんだなと思いました」
いま、りんごちゃんはうどんちゃんとよくにゃんプロをしているという。家に来た時は全く鳴くことがなかったが、最近毛布をふみふみしたり、喉を鳴らしたりするようになり、心を開いてくれたのを感じているという。Tさんは、長年一緒にいたはなちゃんが亡くなった時、りんごちゃんがそばにいてくれたのでずいぶん精神的に支えられたそうだ。
その後、マンチカンのぽてとちゃんも迎えたので、現在Tさんは猫を3匹飼っている。
「多頭飼いは初めてだったのでどうなるか不安もありましたが、慣れてしまうと『モフモフが足りない、もっと!』と思うようになりました」