猫のレオくんは昨年まで屋外でボランティアさんたちからごはんをもらい、TNR活動(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)で去勢手術も済ませた地域猫でした。推定13歳と言いますから、他の猫たちとうまく共存し、ボランティアさんたちにも大切にされていたのでしょう、外猫としてはかなり長生きです。
野口こずえさんがレオくんの住むエリアでボランティアを始めたのは2017年。週に一度ごはんをあげに行く以外に、体調を崩して“旅立ち”が近そうな猫を保護する“看取りボランティア”もしてきました。レオくんの異変に気付いたのは昨年11月3日のことです。
「脚がふらついていたんです。気になりましたが、レオはプライドが高く気難しい性格。ケージに閉じ込めるような生活はどうかと思い、1週間考えることにしました。翌週もまだ決心がつかなくてその場でかなり悩みましたが、放ってはおけなくて連れて帰ったんです」(野口さん)
3時間にも及ぶ検査で分かったこと
もともと“てんかん”の症状が見られたレオくん。野口さんの家に来てから1日に2~3回は発作を起こしていたそうです。それでも最初はふらふらしながら歩いていたのが、次第に歩けなくなり、トイレの場所も覚えていたのに間に合わなくなって…明らかに下半身が麻痺してきていました。
野口さんはかかりつけ医の紹介で高度二次診療の病院へ。MRI検査などを受けるためです。しかしレオくんはひどい低体温症で、獣医師から「(MRI検査に必要な)全身麻酔によって死ぬかもしれない」と告げられました。
「また悩みました。でも先生に、保護していなければ11月に死んでいただろうと言われて、覚悟を決めたんです。原因がはっきりして治療できるほうに望みをかけようと」(野口さん)
レオくんは3時間近く頑張りました。CT検査、MRI検査、骨髄検査…あらゆる検査をし、幸いにも脳に異常はなかったものの、胸骨の脱きゅうが見つかり、「胸骨脱きゅうから胸椎を損傷、そこから炎症が広がって骨増生が起こり、脊柱管狭窄症になっている」という診断が下りました。「痛くて動けなかったんでしょうね。うちには他にも下半身麻痺の猫がいますが、キャットタワーを上がりますから」。野口さんはレオくんを撫でながらそう話しました。
元気になって仲間に再会したい!
胸骨脱きゅうを放置しておくと肺に骨が突き刺さり命にかかわることもあるため、今後手術を検討しなければいけません。てんかんの治療も続けていますし、耳血腫ができたり乳がんが疑われるしこりが見つかったりと、病院とは縁が切れませんが、不思議なことに、しこりはどこにあるのか分からないほど小さくなったそうです。
「担当医もびっくりしていました。炎症が引いて触診では確認できない大きさになっただけかもしれないし、がんではなかったのかもしれない。はっきりしたことは分かりませんが、経過観察すればよくなったおかげで、てんかんの治療に専念できるようになりました。てんかんも最近は発作が起きない日があるんですよ! レオの生きる意欲が一番大きいでしょうが、私はmayu先生の“ヒーリングハープ”の効果もあると思っています」(野口さん)
野口さんは1日3回、レオくんの圧迫排尿とおむつ交換をするのですが、そのとき“ヒーリングハープ”と呼ばれる音楽療法のCDを掛けているのだとか。ハープの音色と自然界の音(川のせせらぎや鳥のさえずり)をミックスしたもので、取材時、部屋に流れていた音楽は心地よいものでした。
「レオは13年もの間、外の厳しい環境で頑張ってきたので、これからはできるだけ美味しいものを食べて、穏やかに暮らしてほしい。こういったハンディのある猫たちのことを、誰かが“スペシャリティキャット”と呼んでいました。誰にでも飼える子ではないから、飼い主も選ばれたのだと。その言葉を励みにしています。どこまで治療するか難しいところですが、今のレオとの目標は、元気になって元いた場所に散歩に行き、仲間たちと再会することです」(野口さん)
レオくんはおかわりを欲しがるほど食欲旺盛だと言いますし、目標を達成する日もそう遠くないでしょう。