“うちの子”に迎えて1カ月、先天性心疾患が判明!左後ろ足を失ったものの回復「今日も生きていてくれてありがとう」

古川 諭香 古川 諭香

自分以外の命と関わりながら生きていく中で、私たちは「生」という言葉に込められた重みを痛感するもの。保護猫のあた丸くんと暮らすももさん(@mugicat226)も、そのひとり。

あた丸くんは、右心房と左心房を隔てる壁に穴が空いている「心房中隔欠損症」という先天性心疾患により、一時は命の危機に。しかし、奇跡の回復を見せ、ももさんと共に「今」を生きています。

里親募集サイトでタレ目の子猫に一目ぼれした

あた丸くんと出会ったのは、とある里親募集サイト。そのサイトから姉妹猫を迎えたことがあったももさんは、タレ目が特徴的なあた丸くんに一目惚れ。

早速、車で1時間半ほどかけて対面しに行きました。「会ってみたら小さく、やっぱりかわいくて。そのままトライアルとなりました」

お迎え初日から、あた丸くんは喉をゴロゴロ鳴らしながらお腹を見せ、リラックス。食欲旺盛で、トイレもちゃんと使ってくれるおりこうさんでした。

しかし、正式にももさん宅の子となってから1カ月が経過しようとしていた頃、突然、あた丸くんの身に異変が起きてしまいました。

トライアル終了後に先天性心疾患が判明

ある日の早朝、ももさんはあた丸くんと一緒に寝ていた娘さんから突然「あたちゃんの様子が変」と起こされました。急いで見に行くと、あた丸くんは鳴きながら家具の奥に隠れようとしており、嘔吐。便も漏らしていました。「下半身は麻痺しており、立ち上がることができませんでした」

もどかしいことに、近くにある夜間救急病院はすでに対応時間外だったため、ももさんは数時間後、朝イチでかかりつけの動物病院へ。検査の結果、先天性の心房中隔欠損症であることが判明。心臓肥大や心臓内で血液の逆流・うっ血がおこり、心臓内に血栓ができていたこと(動脈血栓塞栓症)も発覚しました。

「体温は34度しかなく、両後足は麻痺。検査中に亡くなる可能性も高く、重症なので予後はかなり悪いだろうと言われました」獣医師はももさんに対し、治療するかどうか質問。

「動脈血栓塞栓症は、初見で安楽死を勧められることもまだまだ多いと耳にします。かかりつけ医の質問は家でそのまま看取るか、積極的な治療をするかという意図からでしたが、もし勧められたとしても私は安楽死を選択しなかったと思います」

下半身が麻痺したままでもいいから、命だけは助かってほしい。そう思ったももさんは、積極的に治療する道を選択。あた丸くんは自宅で飲み薬を服用しながら血栓を溶かす薬を点滴してもらう、通院治療を受けることになりました。

闘病中、ももさんは猫のストレス緩和にいいと言われている音楽をあた丸くんに聞いてもらい、メンタル面もケアしようと奮闘。「神社に通ったり、道ですれ違う猫さんに『うちのあたちゃんをよろしく』とお願いしたりしていましたね」

そんな祈りが通じたのか、あた丸くんの右足と尻尾は動くように!ただ、左後ろ足は壊死が進み、やがて先端が自然に取れてしまいました。

「左後ろ足が壊死した場合の話は事前に病院で聞いていましたが、辛かったです。でも、命が助かったのなら、足1本で済んでよかったと思うことにしました」

また、心房中隔の欠損部の穴は成長と共に小さくなっていき、現在は毎日、薬を飲みながら定期的な通院と半年に一度の心臓検査で経過を観察しています。

「いつか、検査時に穴が塞がっているという奇跡が起きたら嬉しい。心筋症や血栓などを抱えながらも長生きする子は、たくさんいます。回復して元気にしている子がここにもいるよと、同じく心疾患の愛猫と暮らす飼い主さんに、声を大にして伝えたいです」

「生きていてくれてありがとう」の毎日

できる範囲で、猫らしい生活を送らせてあげたい。ももさんはそう思い、かかりつけ医と相談しながらおうちで必要な配慮を行い、あた丸くんがほぼ自由に過ごせるようにしています。

特に気にかけているのが、体重管理。肥満になると心臓に負担がかかるため、無理のない範囲で適度に運動させているのだとか。「左後ろ足は、傷口は塞がっていますが肉球や被毛がない状態で時々、出血することがあるので、毎日観察して必要があれば消毒などをしています」

足の一部がなくなっても、あた丸くんは元気いっぱい。毎日、同居猫たちと家の中を走り回っています。

「あたちゃんはかたい体をしていますが、ほっぺはふよふよ。よく伸びるところがかわいい。すぐ怒るけど、すぐにゴロゴロの指チュパ甘えん坊になります」

喜怒哀楽がはっきりしているあた丸くんは同居猫たちに叱られると、あからさまにシュンとした顔を見せることも。苦手な雷が鳴った時には口を大きく開けて驚き、布団に隠れます。

そんなあた丸くんは寂しがり屋でもあり、ももさんがトイレに立つなどし、部屋に誰もいなくなると数分間でも耐えられず、「あお~ん」と鳴くのだとか。

こうした姿を目にするたび、ももさんは「手のかかる子ほどかわいい」と実感。「病気のことをのぞいても、あたちゃんは性格的にもかなり手がかかります(笑)。でも、そういう個性を持った子であることや、大きな病気を小さな体で乗り越えてくれたことなど、全部ひっくるめて、ただただかわいい。生きていてくれてありがとうの毎日です」

そう語るももさんは障がいを持つ猫と生き続けることに対し、こんな持論を持っています。「うちの子は一生投薬が続くので、何もなくても薬代が月に1万円ほどかかりますし、通院などの負担を本ニャンにかけつづけてしまうことにもなります。でも、私は“それだけ”だと思っています。それも日常。生活の一部です」

たまたま優しい保護団体に命を救われ、たまたまももさんに一目惚れされ、たまたま腕のいい獣医師に出会えたことによって、紡がれたあた丸くんの命。その尊さを誰よりも知っているからこそ、ももさんは目の前に存在しているあた丸くんとの日常を、これからも大切にしていきたいと考えています。

「一緒にいられる時間を大事にしたいと思うのは、元気な子でも病気の子でも変わらない。これからも、幸せに過ごしていきたいです」

なお、ももさんは壊死して脱落したあた丸くんの左後ろ足の先端を自宅で大切に保管しているそう。「いつか、虹の橋に行く日が来たら持たせてあげようと思っています」

「動物と生きる」とは一体、どんなことなのか。改めて、そう考えさせられもする、ももさんとあた丸くんの日々は、コロナ禍により世界的なペットブームとなっている今だからこそ、より多くの人の心に刺さるはずです。

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