「テロとの戦い」を終わらせたバイデン政権…手強い「トランプとの戦い」待ったなし 中間選挙で勝てるか

治安 太郎 治安 太郎

バイデン政権の誕生から1年が過ぎた。その1年間を振り返れば、脱トランプ路線、アフガニスタンからの米軍撤退、人権を軸として対中強硬姿勢など多くの出来事があったように思う。しかし、正直なところ、発足当初の勢いや輝きは徐々になくなり、今日バイデン政権は苦しい立場に追い込まれている。

2020年秋の選挙戦は、正にトランプVS反トランプの構図だった。トランプしかいないという立場と、トランプ以外なら誰でもいいという立場の対立が先鋭化していた。その構図が選挙日も続き、結局バイデン氏が勝利することとなった、要は、昨年の選挙戦ではバイデン氏だから勝てたというよりは、トランプ以外の候補者だったから勝利できたと言え、決してバイデン氏自身が魅力的だったと言える状況ではなかった。

バイデン氏は大統領になるやいなや、国際協調主義を強調し、パリ協定への復帰や欧州との関係改善などトランプ時代の4年間を巻き戻すような行動を積極的に推し進めた。しかし、上述したように、パリ協定への復帰などの是非が真剣に検討された結果バイデン政権が評価されたというよりは、とりあえず脱トランプを強調する人ということで反トランプ層からの支持を獲得できたというのが現実だろう。ちょうど1年前、そこにはトランプに勝利した救世主バイデンがいた。

しかし、今日、救世主バイデンはもういない。もっといえば、米国民は夢から覚め、現実に戻っている、それに拍車を掛けたのが一方的とも揶揄されるアフガニスタンからの米軍撤退だろう。これを巡っては、全ての米国人を退避させるまで米軍を撤退させないとしてきた方針を覆したとして米市民の不満が浮き彫りになり、また、迅速な退避ができなかったとして英国やオランダでは外務大臣が降格や辞任に追い込まれるなどし、バイデン政権を取り巻く雰囲気が内外で厳しくなっていった。今日、バイデン政権は支持率低下に苦しんでいるが、正に米市民は救世主バイデンから脱皮し、同政権をトランプから完全に切り離して評価するようになっている。

一方、トランプ前大統領は今年になり、1月15日、アリゾナ州で支持者を集めた集会を行い、2024年にはホワイトハウスを奪還すると次期大統領選へ出馬する意欲を示した。一昨年秋の大統領選では、トランプを支持する極右勢力や白人至上主義者たちの行動が活発になったが、現在では暴力的な行動は減ったものの今でも残っており、今年11月8日に実施される中間選挙でバイデン政権が敗北するとなれば、2024年大統領選に向けて再びその活動が活発化する可能性がある。支持率低下にするバイデン政権としては今が正念場かもしれない。脱トランプを掲げ勝利したバイデン氏がトランプに負ける、このシナリオが現実となれば米国内の分断がこれまで以上に進む恐れもある。テロとの戦いを終わらせたバイデン政権は、既にトランプとの戦いに突入している。

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