家族のことを考えたお店のサービスについて投稿したInstagramが話題になり、「素晴らしき優しさ」とSNSで拡散。その投稿主である北海道帯広市にある中華そば 丸藤商店・店主の藤川純さん(@obihiro.marufujisyoten.ramen)にお話をお伺いしました。
張り紙に書かれている文言がこちら。
【お子様連れのお客様へ】
お父さん、お母さんが
順番に食べられるように、
ラーメンをお出しするタイミングを
ずらしてお持ちいたします。
どうぞ遠慮なく申し付けください
ベビーフードの温め、ミルクのお湯などもお気軽に。
せっかくの外食なので
盛大に散らかし
遠慮なく泣かせてください
中華そば 丸藤商店 3児の父親の店主より
写真の投稿に添えられた文章にも心が揺さぶられます。
「僕自身小さいのが3人もいると行けるところも限られるし、気を使う
しつけのためならしょうがないところもあるとは思いますが
せっかく大好きなパパママとご飯を食べに行く時くらいは、怒られたり、注意されることなく、楽しく、美味しく過ごしてほしいです。
パパママもお店や他の人に気をつかうことなく、気持ちに余裕をもって子供に接してほしいです
とは言われても気を使うのはわかっていますが
子供がうるさくするのは楽しいの裏返し
散らかすのは甘えたいだけ
うちにいる間だけは思いっきり甘やかしてください」
こちらを見た方々からは感動のコメントが相次ぎました。
「読みながらうるうるしちゃいました」
「こんな温かい張り紙あるんですか…泣けてきた」
「子どもがいるとやっぱり気を遣ってしまう外食、とても嬉しいコメントです!」
「関東に住んでいますがいつか食べに行きたいです」
「いつものびたラーメンをたべていたなぁと思いだし、ぐっときました」
「思わず涙ぐみました。せっかく外食するなら楽しみたいですよね。理解者がいるだけで多くの方が救われるかと思います」
「ミルクやベビーフードのことまで気にかけてもらえるなんて本当に有難いです。」
「お店さんからそんなこと言っていただけたらどんなに美味しく感じるか」
「最高に粋で感動しました」
「九州ですが今すぐにでも飛んで行きたいです」
「泣く…」
「このポスターでどれだけのパパママの気持ちが楽になるか…」
「コロナが落ち着いたら子ども二人連れて食べに行きます!」
しかし、各メディアがこちらの張り紙を報道する中、賛否両論の声が飛び交うこととなり藤川さんご自身もかなり戸惑いを感じられているそう。そんな藤川さんに思いを聞きました。
「泣いてもいい、騒いでもいい、散らかしてもいい」スタンスは変わらない
――Instagramに投稿された「お子様連れのお客様へ」の張り紙がSNSで拡散、様々なメディアで報道されかなり大きな反響を呼んでおります。こちらの案内はいつから店内に貼りだされておられるのでしょうか?
2020年3月の開店当初からです。
――お店をはじめた時からお子様連れ歓迎だったのですね。張りだすきっかけが何かあったのでしょうか?
自身の体験からきたものです。意外とウェルカムなお店が少なく感じたためです。また、昨年大病を患う経験をしました。3人の子どもと過ごした時間のこと、妻への感謝や親への孝行のことを考えました。
生かされている今、たまたまラーメン屋であるという職業から、そして、子どもの親という立場から、同じ境遇にあるお客さんには少なくともうちにいる間だけは、1日のうちの3食のたった1食の間の時間だけは、家族の時間を大切にしてほしいと思っただけです。
――たくさんの反響をどのように思われますか?
今回のこと以前は、良い反応が多く写真を撮ったり広めてくれたりすることもありました。ただ、この度の反響は嬉しいより驚きと戸惑いの方が強いです。
肯定してくれる方が多いのと同時に、「盛大に散らかし遠慮なく泣かせてください」といったフレーズなどに対して、多くのご批判・否定的なメッセージもいただきました。もちろん他店様に強要するものではなく、僕だけのスタンスであり、気を悪くした皆さまには申し訳なかったと思っています。
それでも「泣いてもいい、騒いでもいい、散らかしてもいい」、そのスタンスは変えません。
子を持つ親は、みんなそんなことさせていいとは思ってないと思うんです。ただ、子どもがそうなった時にうちの店に対しては「ごめんなさい、申し訳ない」などは思わなくていいですよって、言ってあげたいだけだったんです。
なかなかうまく伝わらないもんだなと実感しました。
そして、僕も飲食店なので実際に来店したお客様の評価は真摯に受け止めます。
小さい店で子ども3人育てていますし、これからも続きます。家族を不安にはさせたくありませんので、直接お店に関わるような誹謗中傷は控えていただきますようお願いいたします。
うちのラーメンとともに楽しい家族の時間を
――店内はお子様連れのお客さんのためにお席など工夫されておられますか?
小上がりの席があります。幼児椅子、バンボ、麺切りカッター、子供が泣いた時用のちょっとしたおもちゃなどは用意しています。
――ありがたい環境です。記事をご覧になった方々へ何かメッセージなどあればお願いいたします。
気を使うなと言われても、使ってしまうのはわかりますが、うちに来た際は本当に気を使わず、家族の楽しい時間になってくれればと思います。
◇ ◇
「3食のうちの1食でも家族との楽しいひとときを」という藤川さんのメッセージにハッとする思いがしました。子連れでの外食時、周りに迷惑をかけたくない気持ちや「躾がなってない」と思われたくない気持ちから、騒ぐ子どもを叱り、険悪なムードのまま食べる…という経験をした人も多いと思います。
親もせっかくの外食であれば美味しいものを熱いうちに気持ち良く食べたい…。それでもやはり子どものことを優先し、かつ、周囲にも気を配り…となるとなかなかそう願い通りにはいかないものです。もちろん、子連れに向き・不向きの飲食店があり、周りのお客さんのことも考えるべきだと思います。そんななか、丸藤商店さんのような優しい心遣いのあるお店を見つけられると本当に救われる気持ちになります。利用する我々も節度を守って、外食を楽しみたいですね。
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Instagramにアップされているラーメンはとにかく美味しそうなビジュアルに食欲がそそられます。「極力体にいいものを意識して作っています」と藤川さん。帯広を訪ねる機会があればぜひ。
■丸藤商店 藤川純さんInstagram https://www.instagram.com/obihiro.marufujisyoten.ramen