「養育費を受け取れていない」7割以上 受け取っていても…月1万円を下回るケースも ひとり親家庭の実情調査

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離婚など様々な理由で、ひとり親で子育てをすることになる場合があると思います。最近はひとり親世帯への公的支援拡充についての報道を見聞きすることも多いです。しかし、食品を無料で配布する事業を行っているNPOが行った調査では、7割以上のひとり親家庭が元配偶者から養育費を受け取れていなかったり、受け取っている場合も月1万円を下回るケースがあるなど、ひとり親家庭を取り巻く環境が非常に厳しいことが分かりました。

ひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」をする運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが2021年6月に行った、主に離婚によるひとり親家庭の養育費受け取りの実情を把握するためのアンケート調査です。東京・神奈川・埼玉・千葉の494人と大阪府の388人、あわせて882名から回答がありました。

ひとり親になった経緯は、未婚・非婚が約1割で、離婚が8割以上となりました。また、扶養している子どもの人数は、東京・大阪ともに1人が約半数と最も多く、若干大阪に多子世帯が多い傾向が見えたといます。

養育費の取り決めがない家庭が多い

養育費受け取りの対象となっている属性の回答者に、養育費の受け渡しの取り決めをしたかどうかを聞くと、東京・大阪ともに「取り決めはしていない」と回答しているひとり親が4割以上にのぼりました。公正証書や家庭裁判所を介して取り決めるなど、強制執行可能な方法で取り決めをした方は東京で17%、大阪で12%に留まっています。

また、「養育費の取り決めをした」と回答した方を対象に具体的な取り決め金額を聞き、子ども一人当たりの金額に換算したところ、「月々2万円〜3万円台の取り決めをした」と回答したひとり親が全体の5割から6割を占めました。

養育費は実際に受け取れているのか

実際の受け取り状況について調査したところ、「毎月受け取っている」と回答した方は、東京19%、大阪13%でした。

「一回も貰えていない」と「数回貰った(あるいは貰ったことはあるが現在は貰えていない)」と回答したひとり親は、合わせて東京70%、大阪74%にものぼりました。

さらに、実際に受け取っている養育費の金額(子どもが複数いる場合は合計額)を調査すると、1万円~3万円が最も多く、1万円以下という回答も少なからずあるという結果になりました。また、取り決めた金額より実際に支払われる金額が低くなっているといいます。

養育費減少の理由については、以下のような回答があったといいます。

   ◇   ◇

・「コロナの影響による相手の収入減少」
・「念書に『増減可能』と記載されている為」
・「養育費を払うように毎月LINEで何度も連絡しているが、お金が無いと言われ減額されたり払ってくれないことも多い」
・「相手は自営業なので仕事の状況や再婚、子供が生まれるなどの理由で支払いが滞る。必要時にはLINEで連絡はとれるが、あまり話し合いに応じてはくれない」

養育費をもらえない現状は改善できるか

養育費をもらえることができていない状況を改善することはできるのでしょうか。「養育費を減額されたことがある/貰えなかったことがある」と回答した人に聞いたところ、状況の改善のために働きかけたことがあると回答した対象者は3割程度でした。

調査には以下のようなコメントも寄せられているそうです。

   ◇   ◇

 【働きかけていない理由】
・「元配偶者のDVが原因で自分から離婚調停をして離婚したので、怖くて連絡していない」
・「離婚に応じてもらうだけで精一杯だった」
・「精神的ストレスになる為、トラウマ」
・「養育費の話をすると火がついたようにキレだす。酒癖が悪く子供も殴られた事があり、これ以上言うと命の危険がある」
・「連絡先がわからない」
・「今住んでいる自宅を知られる恐れがある」

【働きかけたことがあるが解決されないケース】
・「何度か話合いの場を設けたが、声を荒げ話合いにならなかった」
・「裁判所に勧告してもらったが、また数回だけで払われなくなった」
・「親戚から電話をかけてもらったが無視された。DVなどの問題で協議や調停を行うと負担が大きい。弁護士は費用が高額」
・「何度も電話で話し口座を聞かれ教えたが、一度も振り込まれなかった」
・「弁護士に相談したが、相手方から脅迫紛いの行為があり弁護士も手に負えない」

   ◇   ◇

養育費について、調査した同法人は「シングルマザーを例にとると、養育費は元妻が「取る」、夫は「取られる」といった風に語られることがあります。しかし養育費の負担は親の義務であり、離婚により親権がなくなっても親であることは変わりありません。なにより養育費は、監護している親のものではなく「子ども本人のもの」であり、子どもの権利です」と説明。

調査結果を踏まえて、「2021年「親ガチャ」という言葉が世間をにぎわせましたが、養育費を貰えなかったために子どもの人生の選択肢が狭まってしまうことも考えられます。何の責任もない子ども達の将来と、彼らが作る未来のために、すべての子どもの養育費は確保されるべきです」「養育費の確保については『両親の話し合い』が成り立たない場合でも養育費を受け取ることができるよう制度を考える必要があります。例えば勤め先の給与から天引きする、元配偶者が行方不明な場合に裁判所や自治体が連携して居場所を探す、マイナンバー制度を活用するなど、すべての子どもが日本の未来の大切な財産であることを考えればできることはあるのではないでしょうか」と述べています。

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