2人の子どもを抱えての離婚、口約束で取り決めた養育費 しかし、すぐに滞った支払い「信用していたのに」

長岡 杏果 長岡 杏果

ひとり親になると決断し、いざ離婚するときに重要な争点になる養育費。実際どのくらいのひとり親が養育費を受け取っているか知っていますか?今回はAさん(30代女性・事務)の事例を交えて紹介します。

離婚前に話し合い、月5万円と約束した養育費

Aさんは20代前半で結婚し2人の子どもが産まれました。その後、旦那さんの不貞が発覚し20代半ばで離婚することに。当時子どもたちは3歳と1歳だったそうです。

離婚は割とすんなり決まり、親権も争うことなくAさんが持つことができたので「養育費は口約束でも大丈夫かな」と考えていました。

離婚前に2人で話し合い、月5万円と約束した養育費。相手を信用し書面などはとくに残していなかったと言います。しかし、これが間違いだったとAさんは後悔することになるのです。

「最初の2回だけですぐに払ってもらえなくなったの」

養育費の約束をして、離婚後3人での生活がスタートしたAさん。まだ幼い子どもたちのことを考え、時間に融通の利くパートでの仕事を始めました。当時の給料は月10万円未満。しかし、体調不良などで保育園から頻繁に呼び出しされることを考えると、パート勤務以外の選択肢がなかったと話します。

非課税世帯になるため、児童扶養手当は満額支給だったものの日々の生活はギリギリ。「当時はまだ2人目加算が5千円だったから、本当にギリギリ。下の子にはお下がりばっかりだったよ」と話すAさん。

「養育費は?」と聞くと、「あてにしていた養育費は最初の2回だけですぐに払ってもらえなくなったの」とのこと。「裁判とかは考えてないの?」と聞くと、「いろいろ考えて裁判しようかと悩んだけど、元旦那は自営業でね。所得を誤魔化されたらどうしようもないなと考えて今はしてないんだ。弁護士を雇うお金も高いしさ。まずは弁護士費用を稼がないといけないなあ」と苦い顔で話していました。

養育費は子どもの権利

2012(平成24)年3月以前は、養育費の取り決めは双方の意志によるものとされていましたが、民法改正により2012(平成24)年4月以降は離婚の際に養育費の取り決めをしなくてはならないと定められました。さらに、2021(令和3)年4月には離婚届に養育費に関する公正証書を作成したかどうかのチェック欄が追加されることが法務省から発表されました。これは養育費支払いの滞りを防ぐためだそうです。

一方で、養育費の支払い状況はまだまだ低いというデータもあります。2016(平成28)年全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、養育費を受け取ったことがある母子世帯は39.6%、継続して受け取っている世帯は24.3%しかいないということです。

養育費は子どもの権利です。今離婚を考えている人は書面を公正証書で残すことが大切です。現在、子どもたちが成長し手がかからなくなったAさんは養育費の支払いを求める裁判を起こすための準備を始めています。

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