猫ちゃんにもマッサージが効果的だと知っていますか? 冬の寒い時期は猫ちゃんにとっても体調を崩しやすい季節ですが、マッサージを通じて体の冷えを解消し、元気で健康的に過ごせるようになるかもしれません。飼い主さんとのコミュニケーションを深める機会にもなります。ぜひ挑戦してみませんか。
冬の寒さは猫ちゃんに大敵
猫が冬に起こしやすい病気としては、▽ウイルス感染症と呼吸器症状▽心疾患▽泌尿器疾患と腎臓疾患▽関節系疾患―などがあります。
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【ウイルス感染症と呼吸器症状】日本の冬は気温が下がり、乾燥していますが、ウイルスや細菌は低温度、低湿度を好み、冬は暖かい季節に比べると感染力が強くなります。猫も気温が下がることで体温が下がり、免疫細胞の働きが低下して免疫力が下がります。そのため感染症、特に「猫風邪」とよばれる咳、くしゃっみ、鼻水といった症状を起こしやすくなります。ワクチン接種で予防できます。
【心疾患】気温が低いと寒冷刺激で血管が収縮し血圧が上昇し、心臓への負担が大きくなります。特に猫は心筋症を起こしやすいです。血圧の変動を抑えるために体が冷えないようにして予防します。
【泌尿器疾患と腎臓疾患】冬は水分摂取量が減り、尿路結石や膀胱炎などの泌尿器系疾患にかかりやすなります。寒くて動きたくないことからおしっこを我慢し、おしっこが全くでなくなる尿道閉塞を引き起こすこともあり、その場合は動物病院での処置が必要です。慢性腎不全をもっている猫の場合は、冬に悪化することがあるので注意が必要です。
【関節系疾患】活動量が減った高齢の猫では、筋肉が弱ることから関節に負担がかかり、関節症を引き起こし痛みが生じることがあります。冬は寒さで血管が収縮し血流が悪くなり、組織が酸素欠乏の状態になり、痛みが引き起こされます。
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いずれの病気も、体を冷やしてしまうことに起因するため、対策が必要です。マッサージは血流促進、筋肉の伸展強化、疲労回復、軟部組織の癒着の防止、リラクゼーションなどの効果があると言われています。猫が過ごす場所は暖かく保っていただきながら、ぜひ取り組んでみてください。マッサージの前に、市販のホットパックなどで10分程度温めてあげるのも良いです。その場合、低温火傷には十分気を付けてください。
猫ちゃんの肉球には、身体全体のツボがある
マッサージは、四肢、首から腰の体幹、お腹、頭と顔などの部位に行いますが、心臓から遠い足の末端は血液が届きにくいので冷えやすいです。ですので、最初のおすすめは「肉球マッサージ」です。肉球からだんだん心臓に近づきながら四肢のマッサージをしていきましょう。
肉球は人の足裏のように身体全体のツボがあります。前足には肺や心臓、腸、そのほか内臓や疲労回復にかかわるツボが。また後足には胃、肝臓、膀胱、生殖器、胆のうと代謝などに関係するツボがあると言われてます。大まかな目安として参考にすると良いでしょう。
また、首から腰の体幹は姿勢を保つために日々使っている筋肉なので、疲労がたまり筋肉が硬くなっているところもあります。また骨盤周囲やお腹は温めるたりマッサージすることで内臓の冷えを解消できるほか四肢へ循環も良くなります。腸内の活動も改善され免疫力アップにつながるでしょう。頭と顔は撫でられると猫がリラックスできる場所があります。
マッサージの手技の代表的なものがいくつかあります。
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【軽撫法(ストローキング)】指先から手のひらを猫の体に置き、軽く動かします。圧力はいりません。毛の流れに沿って筋肉の縦方向に行うと良いでしょう。体をゆっくりさすることでリラクゼーション効果があり、マッサージの導入部分でよく使用します。リンパなど体液の流れも良くするため、心臓に向かって軽く撫でるのも良いでしょう。
【揉捏法】揉むことで筋肉を絞るような動きです。圧力が加わるので刺激が入り、老廃物も取り除かれ新陳代謝の促進につながります。揉むときは親指や人差し指、中指のはらを使います。内側から外側に円を描くように圧迫と弛緩を繰り返し、ポンプのように循環を促します。また筋肉のコリかたまっているところなどでは絞るような揉み方をして、筋肉をリラックスさせ血液やリンパ液の循環を促します。寒いときは大きな筋肉に実施すると良いです。
【圧迫法】手のひら全体や、手のひらを軽く握って圧迫する方法です。猫の体の大きさや部位によっては指のはらで圧迫することもあります。リズミカルに筋肉に直接圧力を加えます。
【振戦法】表層より下の深い組織に対して行うもので、体に手のひらを軽く置いて手を震わせます。はじめは圧を加えず行い少しずつ加えていきます。
【摩擦法】親指、人差し指、中指を使い少し強めに圧を加えます。筋、靱帯、腱での癒着を抑えます。
【叩打法】手のひらを丸くして両手で交互に優しくリズミカルにポンポンをたたきます。体を活気づけます。
マッサージをする上での禁忌事項や注意点とは
なお、マッサージは状況によっては体に良くないことがあります。急性期疾患があるとき、発熱しているときなどです。怪我などで炎症があるときは血管を収縮させて血流を抑えるので冷やした方が良いです。感染症に感染しているときなども発熱していて冷やした方が良いのでマッサージはできません。
また悪性腫瘍がある部位は、血行が良くなると悪性腫瘍が活性化してしまうことがあるので、マッサージを行わない方がいいでしょう。
猫はもともと人に触られることが不快なことも少なくありません。無理にマッサージをするとストレスなってしまうので、猫がリラックスしているときに行ってあげると良いでしょう。
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マッサージは愛猫と飼い主さんとの絆を深めるスキンシップにもなります。信頼関係が高まれば、それだけ問題行動や病気怪我に早く気づくことができるようになります。冬は水分摂取の具合や一日の活動量など、特に猫ちゃんの様子を気にかける必要がある時期です。愛猫と触れ合う時間を作って、より楽しいキャットライフを過ごしてください。
【愛猫ちゃんのためのお役立ちビデオ講座『ネコデミー』】
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◆下神納木 加枝(しもこうのき かえ)大阪府堺市出身。1982年生まれ。認定動物看護師。2005年理学療法士国家資格取得。7年間病院勤務。オーストラリア短期アニマル理学療法セミナーに参加。2012年から動物病院にてリハビリに携わり、現在つくば市でペットケアサロン経営、横浜市の動物病院、港区のペットのメディカルサロンの2カ所で契約。公益社団法人茨城県理学療法士会常任理事。愛猫ちゃんのためのお役立ちビデオ講座『ネコデミー』でも講師を務める。