サンタさんに「世界で一番大きい葉っぱ」をリクエストした6歳の女の子 年内で閉まる小さな植物園が最後の大仕事!

黒川 裕生 黒川 裕生

クリスマス、6歳の女の子がサンタクロースにお願いしたプレゼントはなんと「せかいでいちばんおおきいはっぱ」! 想定外のリクエストに、「これはサンタさんも困るのでは…」と頭を抱えたお母さんがTwitterで「どなたかお知恵を」と呼び掛けたところ、渋谷区ふれあい植物センターという小さな植物園を紹介されました。さて、お嬢さんは無事に「おおきいはっぱ」を手にすることができたのでしょうか―。

結論から書くと、前のめりで協力を買って出た植物園がサンタさんの代理を務め、様々な草花が生い茂る園内を案内。女の子は自分の背丈よりも大きい葉っぱを見つけ、大喜びで持ち帰ったそうです。これには経緯を見守っていたTwitterユーザーたちも歓喜。「素敵なクリスマスプレゼント!」「超可愛くて楽しそう」「サンタさんに幸あれ」などなど、温かい祝福の言葉が溢れました。

母親の尚(Nao)さん(@naoapoco)にお話をうかがいました。

―娘さんはどうして大きな葉っぱを欲しがったのでしょうか。

「何を参考にしてそう思ったのかはよくわからないのですが、理由は『仮面を作りたいから』というものでした。困ったな…というのが正直な気持ちです。『せめて、サンタさんが手配しやすいプレゼントにしてくれればいいのに』って(笑)」

「他に欲しいおもちゃがないか聞いたり、画用紙とかで仮面を作ってみてはどうかと聞いたり、なんとか葉っぱ以外のプレゼントに誘導しようとしたのですが、娘の意思は相当固く…。これは親としてどうにか叶えなくては!と覚悟を決めて、解決策を考えることにしました。でも夫婦だけではアイデアに限界があり、自分のフォロワーさんのお知恵を借りられればと、藁にもすがる気持ちでツイートしました」

植物園が「サンタの代理」を買って出る

―渋谷区ふれあい植物センターさんにたどり着いた経緯をあらためて教えてください。

「自分の趣味の切り絵を通じて知り合ったフォロワーさんが投稿を広めてくださって、それを見た方から植物園の宮内さん(※宮内元子園長)をご紹介いただきました。宮内さんが『世界で一番大きな葉っぱのプレゼントを自分がサンタさんから預かり、植物園でお渡しするという計画はどうか』と提案してくださったので、ありがたく受けて12月26日に伺うことになりました」

「クリスマスイブには、娘にサンタさんからのプレゼントとして『大きな葉っぱチケット』と『渋谷区ふれあい植物センターまでの地図』をお手紙と一緒に渡しました」

―植物園での娘さんの様子はいかがでしたか?

「娘はシャイな性格で、初対面の方には物怖じしてしまうのですが、宮内さんがノリノリで接してくれて、『この葉っぱはどうかな? これじゃまだ小さいかな?』などといろいろ聞いてくださったので、娘も自分でしっかり葉っぱを見て、お気に入りの1枚を選ぶことができました」

「受け取ってからも『自分の背よりも大きい!』と大はしゃぎで、宮内さんから『準備ができるまで植物園を見て、面白い植物を探してね』と言われて園内を見学している間も、『もう準備できた? 早く行こうよ!』と大きな葉っぱが気になって仕方がない様子でした」

「駅から植物園まで歩くときは歩き疲れて抱っこをねだってきた娘が、帰りは大きな葉っぱを抱えて、風にふらつきながらも誇らしげに歩く姿を見て、『娘のこの達成感と喜びは、お金では決して手に入らなかったな。いろんな方のお力におんぶに抱っこだったけど、頑張ってよかったな』と思いました」

尚(Nao)さんによると、娘さんが選んだのはアンスリウムフーケリーの葉っぱ。サイズはさすがに「世界一」とまではいきませんが、身長115cmの娘さんよりずっと大きい136cmとのことです。

―一夜明けて娘さんの様子はどうでしょう。(取材日は12月27日)

「とりあえず仮面のデザインが決まるまでは花瓶に生けてお風呂場に置いているのですが、すっかり葉っぱそのものが気に入ったようで、名前をつけたり、おやすみのキスをしたり、数分おきにお風呂場に行っては葉っぱを眺めたりしています。植物園でいただいたスイセンとチューリップの球根も早速プランターに植えて、『春までに花を咲かせるんだ』と張り切っています」

―宮内さんやTwitterで反応してくれた人たちに伝えたいことは。

「月並みな言葉ですが、人同士のつながりの強さと、皆さんの優しさを本当に感じました。自分たちだけではどうにもできなかったことが、自分の趣味の切り絵を通じて知り合った方のつながりから宮内さんという素晴らしい方に巡り会えて、植物園の皆さんのご協力で葉っぱを手に入れられたことに感謝です。そして、それをTwitterで見た方々が温かく応援してくださったおかげで、素晴らしいクリスマスを迎えることができました」

「親としては、これだけ多くの方のご厚意でいただいた葉っぱなので、その思いに負けないような立派な仮面を作らなきゃと、プレッシャーを感じています(笑)」

“奇跡”を起こした植物園は28日が最後の営業日

さて今回、サンタクロースの代理という大役を務めた渋谷区ふれあい植物センターですが、実は改修工事のため、12月28日の営業を最後に長期休園に入ります。再開は2023年度、野菜の栽培やレストラン施設として生まれ変わる予定です。

現状の植物園としては最後の営業日を前に、園長の宮内元子さんにも話を聞きました。

―尚(Nao)さんからの珍しい相談、どう思われましたか?

「植物園として絶対にお手伝いすべき依頼だと思いました。想像を遥かに超える世界や、本人の希望を上回る答えでその人の好奇心や世界を広げる事こそがミュージアムの使命だと私は信じているからです」

―2005年に開園してから16年、印象深い出来事などがあれば教えてください。

「4歳のときから通ってくれている小学2年生と、植物園でスケッチを描いてくださったイラストレーターさんが意気投合し、今年はずっと2人で絵を描き続けてくれました。イラストレーターさんは作品をまとめて、28日まで表参道で個展を開催されています。そして2年生は私に手作りの図鑑をくれました。植物園という場を行き交う人々を見守り続けた自分へのご褒美が、人と人との出会いという形でもたらされたのだと感じました」

「これまで足を運んでくれた皆さん、そしてもちろん尚(Nao)さん親子にも、『日本で一番小さい植物園』を最後に『最も愛される植物園』にしてくれて本当にありがとうと伝えたいです」

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