母猫が消えて…米蔵と味噌蔵で保護された猫
みそちゃん(オス・生後7ヶ月)は、2021年5月、栃木県に住む保護主宅の米蔵にポツンと1匹でいたところを保護された。最初は母猫と一緒にいたのだが、母猫は姿を消し、みそちゃんを探しに戻ってくることはなかった。保護主は、みそちゃんを保護した1週間後、今度は味噌蔵におこめちゃん(メス・生後7ヶ月)がいるのを見つけた。おこめちゃんもやはりひとりぼっちで取り残されていたので保護したという。
保護主はすでに猫を飼っていたので、栃木県で保護活動及びTNR活動をしているAngel dog & Love catという非営利の保護団体に2匹を託した。2021年5月16日のことだった。
この子たちはうちに来るかも・・・
埼玉県に住む金井さんは3ヶ月後、おこめちゃんとみそちゃんに出会った。金井さんはシャムミックスの猫を飼っていた。その子は山梨県で保護された猫で、譲渡してもらったのだが、8月25日、突然の体調を崩し、5歳という若さで急に亡くなった。
金井さんは、しばらくは喪に服すべきかと思ったが、猫のいない暮らしはとてもひっそりとしていて、1週間が過ぎた頃、寂しさのあまり“ペットのおうち”という譲渡サイトで猫を眺めて気をまぎらわせようとした。新たに猫を迎えるつもりはなかったが、おこめちゃんとみそちゃんの写真を見て、目が釘付けになった。一目惚れだった。
「最初に見たのはおこめの方でした。前に飼っていた猫と同じシャムミックスで、目が大きくて人懐っこい顔がとても可愛かったのです。その募集記事には、おこめには兄妹がいて、兄妹で一緒に引き取るのが必須条件と書かれていました。みそを見た時も胸がキュンキュンして、まんまるな黒目がちでちょっと臆病そうな顔が、先々代の猫を思い出させ、なぜかその時うっすら『この子たちはうちに来るかも・・・』と思ったのです」
見送ってくれた2匹の猫
よくよく見てみると、募集地域は栃木県内のみ、埼玉県は入っていなかった。しかし、金井さんはいちかばちかで応募して、自分の想いを伝えてみようと思った。
「まずはアンケートに回答したのですが、気づいたら長文になっていて、『ちょっと先方がひくかな?』というくらいの長さでした(笑)」
その甲斐があって、お見合いさせてもらえることになった。
2021年9月14日、金井さん一家は、高速に乗って1時間半かけておこめちゃんとみそちゃんに会いに行った。Angel dog & Love catのシェルターは、犬や猫が暮らしやすいように民家を改造してあるのだが、猫は30匹以上いた。みんな心地良さそうに暮らしているのが分かった。
みそちゃんは緊張していて、キャットタワーの上から様子を伺っていたが、おこめちゃんはすぐに近づいてきて挨拶をしてくれた。夫も長女もすぐに仲良くなった。1時間ほど滞在して、思いの丈を述べ、迎えることになったという。最後にみそちゃんも出てきてくれた。
「玄関を出て車に乗り込む時、小窓からおこめとみそが揃って私たちが帰るのを眺めているのが見えました。たくさん猫たちがいる中で、2匹が別の部屋の窓に駆け寄って私たちを見送る姿を見た時、『ああ、私の勘は間違いなかったな』と思うと同時に、2匹が幸せに暮らせるように全力を尽くそうと心に誓いました」
家に迎えてからの2匹の猫は…
2週間後に2匹がやってくることになった。子猫を迎えるのは久しぶりだったので、部屋中の窓に補助錠をつけたり、間違って出てしまわないようにワイヤーネットの設置をしたり、Angel dog & Love catの家にあったようなパティオを夫と手作りした。2匹が外で保護されたので、たまに外の空気や鳥の声を感じることができる場所作りをして環境を整えた。
9月28日、Angel dog & Love catのスタッフが2匹を連れてきてくれた。おこめちゃんはすぐに動きまわり、長女と遊び始めた。女の子の方が活発で人見知りしないようだった。みそちゃんは部屋の隅に隠れてじっとしていたので、慣れるのをゆっくり待つことにしたのだが、みそちゃんがあちらこちらを探検するようになるまで3日かかったという。
「もともと猫好きの家族だったのですが、おこめとみそが来てくれたおかげで家族全員がさらによく笑い、よく協力するようになったと思います」
おこめちゃんは人懐っこく、甘え上手で活発。窓に張ったワイヤーネットにスパイダーニャンのように登る。みそちゃんはびびりの甘えん坊で、いつもおこめが大丈夫な状況を確認してから進むタイプ。おこめちゃんのことが大好きで、いつもくっついて歩いている。タワーのてっぺんはおこめちゃんに譲りたくない。娘のピアノを聞くのがわりと好き。2匹ともおもちゃ遊びがかなり好きで、キッチン探検(荒らし)も大好き。夜中も部屋中をかけっこ競争したり、プロレスしたり毎晩大騒ぎなんだという。