今年1月、大阪府箕面市に住む元飼い主の男性からアルコールスプレーをかけられた上に火を付けられ、全身に大やけどを負うなど虐待を受けたトラくん(雄、4歳)。一時は命の危険にさらされましたが、11カ月ほどの治療を経て奇跡的な回復を遂げました。近く退院するといいます。
トラくんは、保護猫カフェ「CARA CAT CAFE」(大阪府箕面市)から譲渡された保護猫でした。虐待発覚からこれまで長期にわたり動物病院に入院。一方、男性は動物愛護法違反(殺傷)の罪で略式起訴され、今月5日付けで大阪池田簡裁から罰金10万円の略式命令を言い渡されました。
検察側から届いた「略式起訴、罰金10万円」という通知に保護猫カフェのオーナーさんは、やるせない思いとともに悲しみに包まれました。
「略式起訴で罰金命令10万円だけ・・・これは、あまりにも悲しく黙っていられなくなりました。トラくんの写真を公にしていませんでしたが、被害のひどさを知ってもらいたいと思い、ブログに公開することにしました。大やけどを負った写真を検察の人に見せているのに。トラくんがあれだけのことをされたというのに。この程度かと・・・刑が軽すぎると感じました」
大やけどの元保護猫、4年ほど前カフェにやって来た 人懐っこくすぐに里親決定
そんな大やけどを負ったトラくんが保護猫カフェにやって来たのは4年ほど前。野良猫だったトラくんを地域猫活動に取り組む団体が保護しました。当時は生後3カ月ほどの子猫。しっぽがジグザグの「鍵しっぽ」だったので、カフェでは「ジグザくん」と呼ばれていました。カフェに来たばかりのころから人懐っこくお客さんの膝に乗ったりととてもかわいがられたそうです。その人懐っこさとかわいさから、里親もすぐに決まりました。トラくんと一緒に三毛猫も男性に譲渡したといいます。
しかし、譲渡から数年経った今年1月初旬。男性が体中焼けただれた痛々しい姿のトラくんを病院に連れて来たのです。
「トラくんたちは幸せに過ごしていると思っていたのに・・・獣医師さんはすぐに警察に通報してくれました。トラくんは命の危険があったので、そのまま入院。また三毛猫も男性の自宅に1匹残されたままだったので、急いで返してもらおうと迎えに行きました。そのときは怖くて身震いがしました」
そして、通報を受けた大阪府警は自宅で飼い猫にやけどを負わせたとして、男性を動物愛護法違反容疑で書類送検。4月、大阪地検が男性を不起訴(起訴猶予)としましたが、俳優の杉本彩さんが理事長を務める動物愛護団体や保護猫カフェのオーナーさんたちが、大阪第3検察審査会に審査を請求。同審査会が7月に「残忍かつ悪質な犯行」として「起訴相当」を議決して地検が再捜査し、このほど略式起訴を経て罰金刑となりました。
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検察官から「前例がない」と言われ、一度は不起訴に・・・店主「前例に頼っていたら、虐待はなくならない」
保護猫カフェのオーナーさんによると、トラくんは入院した際、助かるか助からないかの瀬戸際でした。数週間くらい経ち、何とか一命を取り留めることができたものの、皮膚は腐ってボロボロとはがれてしまう状態で、耳の先も焦げ落ちていたとのこと。鎮静剤を投与して、消毒しながら腐ってしまった皮膚を取り除いたほか皮膚移植手術も何度か行い、ようやく今は皮膚が少しずつ再生しつつあるそうです。
虐待発覚後、トラくんを見守ってきたオーナーさん。トラくんの体と心に負った大きな“傷”を目の当たりして、今回の罰金刑そして、動物愛護管理法(※)の在り方に、こう一石を投じます。
「昨年、動物愛護管理法が改正・厳罰化されましたが、トラくんの件でさえ罰金10万円程度。書類送検後に検察の方とお会いした際は、『前例がないから』とおっしゃっていました。その結果が不起訴。そこで私たちが不服申し立てをして、審査会でせっかく『起訴相当』にもなったのに、『略式起訴、罰金10万円』だけ。・・・前例に頼っていたらいつまでも現状は変わりません。虐待もなくなりません。今回のような結果が、かえって『たいした罰も受けないから』と虐待を続けてしまう人も出てくるのではないかと危惧しています。動物の命の重さを今一度考えていただいた上で、しっかりと処罰してほしいものです」
トラくんは退院後、入院した動物病院の院長先生のおうちに迎えられます。幸せになれる場所が見つかり、オーナーさんも喜んでいるそうです。
※2020年6月施行の改正動物愛護法でペットの殺傷に対する罰則が強化され、5年以下の懲役または500万円以下の罰金となった。
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