人狼ゲームをご存知だろうか。10人前後で楽しめるパーティゲームで、嘘をついて味方になりすました敵を暴き出すというものだ。それを採用面接で行い企業と学生が互いに理解を深め、その結果、効率的な採用につなげる合同説明会「人狼合説」を企画するソフトウェア企業がある。トラストリング(大阪府大阪市)だ。
オンラインのストレスをなくす合同説明会
コロナ禍以前の合同説明会といえば、広い会場に並ぶ企業ブースを学生らが訪問し、説明を受けるというものだった。ところが今の企業説明会はオンラインが主流。学生にとっては交通費もかからずリラックスして臨めるなどのメリットがある反面、社風をはじめ相手の表情や反応がわかりにくい。同じく企業も、学生の人柄や熱意、思いを受け止めにくいと、もどかしさを覚えるという。それらの課題を解決する「人狼合説」は、『とにかく楽しい合説』が合言葉のオンライン就職説明会だ。
人狼合説では最大50名の学生に対し、様々な業界の15社が参加。学生は自己紹介した上で、各企業の自社PRを聞いたのち、気になる企業の社長さんらと人狼ゲームに興じる。希望者は、翌日以降に企業面談へ進む。実は人狼ゲームは、その人の本性や戦略性といった内面が表れるからと、資質や適性を見る目的で企業の新人研修に利用されることもあるのだ。
決め手は人、そして成長
人狼合説は、もともと主催するトラストリングが行っていた学生向けオンライン説明会。学生のストレスや不安、堅苦しさを取り除いて自分らしさを出してもらえるよう、なにより楽しさを追求した。企業側も学生の人柄がつかみやすく、面接などの選考期間を短縮できる。なぜこのようなアイデアが出たのか?
「かつて私自身も、堅苦しく型通りの企業面接に納得できなかったから」と話すのは同社の島田大学社長。事業説明に終始する企業と、就活スーツに就活マニュアルで武装する学生とでは、互いのうわべの顔しかわからない。
学生にとって行きたくなる企業の決め手は「どんな人と働けるか」「自分が成長できるか」だという。それがわからないと、結局ブランド名や自身のこだわりだけで決めてしまい、就職後に「こんなはずでは」と後悔する例が少なくない。
「人狼合説では、学生さんはスーツ禁止!参加企業は仮装必須!さらにゲームで互いの距離が一気に縮まり、ものの20~30分で和やかな雰囲気になって互いの本質もわかります」
学生と企業の橋渡しに
参加企業は主に中小企業だ。同社の吉川朝吉副社長は「質の高い中小企業にぜひ参加して欲しい」と言う。
「自身が成長できる企業を望む若者は多い。誰と働けば成長できるか、成長を大切にする企業はどこかと探しているのです」
ひたむきな学生と、そうした人材を望む中小企業との橋渡しになればと願う吉川副社長。もともと中小企業の発信力の乏しさと、人手不足から生産性を下げてしまう企業があることに問題意識を持っていたからこそ、人狼合説を広めようとしている。
「素晴らしい取り組みを行う中小零細企業は多いのに、人がいないからと挑戦を見送るなんて非常にもったいない。弊社もベンチャーだからこそ、大手に真似できない『人狼合説』を始めました。ぜひ人狼合説で、理想の人材を見つけて欲しい」と話す。
すでに7月と9月に行った人狼合説で、採用に至った企業もある。次回は11月18日、19日と初めての2日間開催で、面接は20日と21日の予定だ。
【トラストリング株式会社】https://trustring.jp/