「お客様が喜んでくれればと、ひそかに『厚切りロースかつ』のサイズを大きくして約1週間。どなたか気づいてくれるかなとドキドキしていたのに、だれも気づいてくれないので我慢できなくなった店長がついに決行した作戦がこちらです。」
このようなツイートとともに公開された、とんかつ店の店長の後ろ姿の写真。背中には大きな貼り紙が貼られています。
「厚切りロースかつがさらに分厚くなったような気がするのは店長だけでしょうか?」
あまりにストレートなアピール方法ですね。それでいて嫌味ではなく、むしろお客様をクスリと笑わせてしまうようなサービス精神を感じます。
このようなお茶目な宣伝方法をうって出たのは、奈良県の「とんかつ店まるかつ」(@marukatsunara)の店長・金子友則さん。金子さんによると、厚切りロースかつは「20gほど増量」されたとのことです。
近年、赤字・経営不振などの事情により、商品の内容量を減らすメーカーが多いなか、あえて増量に踏み込むというところに、金子さんの心意気を感じます。
「ただ、やみくもにボリュームを追求しているつもりはありません。衣とのバランスも考えて、豚肉のうま味も感じられて、あくまで柔らかく揚げ上がる厚さにとどめているつもりです。揚げ油や小麦粉、卵など、あらゆる食材が値上がりしている中で、豚肉はそこまで値上がりしておらず、少しくらいの原価アップでお客様が喜んでいただけるなら、と判断しました」(金子さん)
このように、コスト面や商品の質、顧客へのニーズも考慮に入れつつ、より満足いただけるようにと踏み切った今回の増量。にもかかわらず、それが誰にも気づかれないのは悲しいものです。
そこで行われた「背中に貼り紙」という作戦――反響はどうだったのでしょうか?
「文言も含め、あくまでも『しゃれ』で始めたことですが、意図をご理解いただき笑ってくださる方が多いです」(金子さん)
その一方で、「店長が動きすぎて、なんて書いているか読めへん」というクレーム(笑)もあるとか。
どちらの評判に対しても、「注目していただけるのは本当にありがたいです」と金子さん。実際のところ、「厚切りロースかつ」の注文数は増えているとのことです。
今回の試みを紹介したツイートにも大きな反響が。
「この店おすすめできないです(これ以上繁盛されたら困る…w)」
「そもそもここのカツ食べてしまうと他店で食えないからあかん」
「あれが更に分厚くなったんですね!夢と希望しかない」
「背中で語るのがまるかつ店長さんの定番スタイル」
「背中で語る店長素敵です」
など、リプ欄では同店の商品や店長を絶賛する声が相次いでいます。
ちなみに、同店は奈良市(奈良本店)と生駒市(生駒店)にありますが、ツイートでは「生駒店の厚切りロースも大きくなった気がします!」という声も。
お客様にもっと喜んでいただけるには…をいつも考えて
厚切りロースかつの増量とその宣伝方法によって、大きな話題となった「とんかつ店まるかつ」。同店がこのようなサービスを行うのは、これが初めてではありません。
以前は「えびフライ」の中のえびを内緒で大きくし、とんかつを差し置いて「まるかつ名物」を言われるほどになったこともあるそうです。
ちなみに、この時も金子店長は背中で語っていました。
また、通販やお持ち帰りで商品を購入された方に対し、クーポンを「賄賂」と書かれた封筒に入れて配ったことも。賄賂は本来良くないニュアンスの言葉ですが、より楽しくと考えて名づけられたこの「賄賂」は、お客様も笑顔で受け取ってくださるそうです。
さらに、「まるかつ無料食堂」として、子どもも大人もお金がなく困っていらっしゃる方に向けて無料で食事を提供するサービスも実施。
「財布をなくした長距離トラックのドライバーさんに無料で食事を提供したところ、別のドライバーさんが『仲間が助けられたお礼に』とご家族で食事に来られた」という心温まるエピソードも。
なぜこんなにもたくさんのサービスを行われているのでしょうか。金子さんに想いについておうかがいしたところ、以下のようにお答えくださいました。
「『常に何か変わったことをしないと』という意識はありませんし、大して立派なこともできませんが、他人様に迷惑をおかけしない範囲で、せっかく来てくださるお客様にもっと喜んでいただけるにはどうしたらいいか、ということはいつも考えているつもりです」 (金子さん)
ユーモアも交えつつ、お客様に満足してもらえるサービスを、金子さんはこれからも打ち出し続けると言います。
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