天井裏から子猫の鳴き声 家の壁に穴を開け、捜索のプロが救出!キジトラ一家の家族となる

岡部 充代 岡部 充代

 家の天井裏から猫の鳴き声が聞こえたら、誰だってびっくりします。昨年9月、大阪市の佐々木美奈子さんは自宅応接間の天井裏からかすかに聞こえる子猫の声に気づきました。

「忘れもしません、蒸し暑い日でした。最初は裏庭から聞こえてきたのかと思ったんです。そこで子育てをしているお母さん猫を見たことがありましたし、子猫が運動会をしていたこともあったので。でも、そこにはいなくて。耳を澄ますと、頭の上から聞こえていることが分かりました」(佐々木さん)

 

 お世話になっている大工さんに頼んで天井裏を覗いてもらいましたが、姿は見えませんでした。しかも、大工さんからは「動物アレルギーなので、見つけても捕まえられません」と衝撃の告白。佐々木さんは帰宅したご主人と一緒にいろいろな場所を探しました。でも、声はするのにどうしても見つけられなくて…。プロに頼むしかないと考え、インターネットで検索して『ねこから目線。』に依頼しました。

 『ねこから目線。』は野良猫・保護猫専門のお手伝い屋さん。野良猫の捕獲、病院への搬送、脱走猫の捜索、里親探しなど、猫にメリットがあると考えられることなら何でもお手伝いしてくれます。

 家の壁に穴を開けて子猫捜索

 夜7時にスタッフが到着。子猫は朝からずっと鳴いていました。もう一度、天井裏をチェックしましたが姿はなく、鳴き声を頼りに家の中を捜索すると…玄関から応接間につながる壁の中から声が! スタッフは壁に耳を当て、医師であるご主人は聴診器を壁に当てて、「間違いない」と確信しました。

「ここに穴を開けて」

 佐々木夫妻は再び駆けつけてくれた大工さんに頼みました。「壁に穴を?」と驚かれたそうですが、夫妻に迷いはなかったと言います。

「壁の穴なんかどうでもいいと主人も言っていましたし、私も同じ気持ちでした」(佐々木さん)

 大工さんは電動工具を使って木の壁に20×30センチ程度の穴を開けてくれました。でも、断熱材が入っていて子猫が動き回れる隙間はありません。もう一度、再捜索です。

とにかく子猫を助けてあげたい!

 大工さんに家の構造を確認すると、隣の部屋の床下収納から床下を覗けるかもしれないことが分かりました。すぐに『ねこから目線。』のスタッフが潜入。すると子猫の声が大きくなったそうです。懸命に探すこと1時間。ようやく子猫を見つけ、目いっぱい手を伸ばして救出することができました。

「感動しました。スタッフの方は床下に潜って、汗だく、砂まみれになりながら探してくださったんです。子猫は本当に小さくて、あのままでは生きていけなかったでしょう。天井裏の端に隙間があったようなので、恐らくそこから下に落ちて、壁の隙間に挟まったのだと思います。でも、工具を使って穴を開けたことと、大工さんが断熱材を押し込んでくれたことで、今度は床下に落ちた。それで見つけられたんです。結果的に穴を開けてよかったですよね」

 佐々木さんは笑いながら話してくれましたが、家の壁に穴を開けるなんて、そう簡単にできることではありません。しかも昼間には、天井裏の構造を見るために、2階の床の間の床にも穴を開けたと言うではありませんか!

「うちにはずっと犬がいますし、私の実家には猫がいました。主人も私も動物が好きで、主人は医師ですから“命”というものに特別な想いもあったかもしれません。とにかく子猫を助けてあげたい、それだけでした。壁の穴はもちろん塞いでもらいましたよ(笑)」(佐々木さん)

 子猫に“ずっとの家族”ができた

「カベ君」という仮の名前をもらった子猫は体重300グラム程だったため、リリースすることはできないと、『川西TNR地域ねこの会』のボランティアさんが一時預かり“里親募集”。間もなく希望者が現れ、カベ君に“ずっとの家族”ができました。今の名前は「球幸(たまゆき)くん」。動物好きのご家族に愛され、キジトラばかりの同居猫たちと仲良く暮らしているそうです。

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