コーヒーをペーパードリップで淹れている人ならば、メリタ(Melitta)とカリタ(Kalita)の違いについて知っておいたほうがいいでしょう。それはどのドリッパーを使っているのかによって、淹れ方が違うからです。日本人の10人のうち9人がコーヒーを飲んでいて、コロナ禍でリモートワークやおうち時間が増えたことにより、昨年に比べてコーヒー豆の検索数が倍になったというデータがあります。
まず、会社の違いから説明すると、メリタは1908年にドイツ人の女性創業者であるメリタ・ベンツによって誕生。世界初のペーパードリップシステムや1つ穴方式の独自フィルター、特許技術を用いたフィルターペーパーなどもメリタ・ベンツによって開発されました。
カリタは1958年に糸滿盛京が東京日本橋で創業。その後、ドイツ語のKaffeeとFilterの造語であるカリタ(Kalita)という社名に変更しました。都市伝説ではメリタの「メリ」が漢字の「刈」に見えることからカリタと命名したという話もありましたが、メリタとは関係ありません。
メリタとカリタのドリッパーの見分け方は穴の数
メリタとカリタはドリッパーにも違いがあり、抽出穴の数がメリタは1穴、カリタは3つ穴になっています。といっても、メリタのドリッパーは1908年には無数の穴が空いていました。1932年には大きな穴1つになり、1936年には4つ穴、1954年には3つ穴、1960年に1つ穴になったというように試行錯誤を重ねて現在の1つ穴になったのです。
このメリタの1つ穴を採用しているのには理由があります。通常のドリップ方式だと、注ぎ始めと終わりの抽出スピードが異なってしまうことや、3つ穴だと注ぎ終わりになるとコーヒーが流れ出る方向が限られてきて、抽出時間の調整が難しいからです。
一般的な陶器製の2~4人サイズのドリッパーである、メリタ「SF-WH 1×2」とカリタ「102-ロト」を比較してみると、ドリッパーの内側にあるリブ(溝)の長さにも違いがあります。メリタは底から中段あたりまでリブがあるのに対し、カリタは底から上段まであるためペーパーフィルターとドリッパーの間に空間を作る構造になっています。この空間から空気が抜けることでコーヒーの粉を蒸らしたときにしっかり膨らみスムーズな抽出を可能にします。
メリタとカリタは淹れ方にも違いがある
コーヒーの粉の量やすくうメジャースプーンの形状にも違いがあります。1杯のコーヒーを抽出するため、メリタは125ccのコーヒーを作るのに対し約8グラムの豆を使い、スプーンは円錐形。カリタは120ccを作るのに対し約10グラムの豆を使いスプーンは円柱型です。
さらに両社ともオリジナルのペーパーフィルターを用意しています。メリタはコーヒーのアロマ(香り成分)を理想的な量で抽出するように3つの層にわけ、ディンプル加工を施し、また繊維の流れを無指向性にすることで理想的な速さでムラなく抽出可能にしています。
コーヒーの淹れ方も違います。淹れる前に30秒ほど蒸らすのはどちらも同じだけれど、メリタは挽いたコーヒー豆の中心へ一気に注ぐのに対して、カリタは中心から「の」の字を描くように3周ほど内側から外側に注いでいき、一度ではなく数回に渡ってちょっとずつ注ぎます。
この淹れ方だとメリタは正確な時間で安定した味を抽出でき、カリタは注ぐ量やタイミングをコントロールすることによって好みの味に自分で調整できます。初心者や淹れる手間を省きたい人はメリタ。自分の好みの味に淹れたい、淹れるのも楽しみたいという中級者以上の人はカリタが向いているでしょう。筆者はどちらも持っていて、TPOに分けて使い分けています。
もっとラクにコーヒーを楽しみたいのであれば、コーヒーメーカーを使うという手もあります。メリタのロングセラーモデルで2015年の登場以来、累計30万台も売り上げている『オルフィプラス』と『ノアプラス』に「蒸らし機能」が追加され、ハンドドリップ同等に淹れられるようになりました。発売は12月15日とちょっと先ですが、クリスマスプレゼントにいいかもしれませんね。