コロナ禍で閉鎖されたままの街の喫煙所 緊急事態宣言全面解除で再開どうなる?

黒川 裕生 黒川 裕生

コロナ禍以降、街の喫煙所が激減した。「不特定多数の人が密集しやすい」などとして、感染拡大防止を理由にその多くが一時的に封鎖、あるいは撤去されてしまったからだ。コンビニなどの店舗前に設置されていた灰皿も、特に都市部では今、ほとんど目にすることがない。感染状況の改善を踏まえ、政府は19都道府県に出されている緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置を9月末に全面解除するが、姿を消した喫煙所はこの先どうなるのか。神戸市の現状を取材した。

一時封鎖→撤去の流れ

神戸市では2020年3月末以降、市や関係団体が設置した多くの喫煙所が使用できない状態に。JR元町駅南側にある喫煙所は、兵庫県のまん延防止等重点措置が解除されたタイミングで使えた時期もあるが、緊急事態宣言の発令を受けてまた封鎖された。2021年9月現在、出入り口には黄色と黒の立ち入り禁止テープが張られ、「感染拡大防止のため一時封鎖します」という市からの「お知らせ」が掲出されている。

このエリアは市が定める「路上喫煙禁止地区」に当たるため、受動喫煙防止の観点から公衆の喫煙所として市が設置した。同様の喫煙所は三宮・元町エリアを中心に4カ所あるが、うち2カ所はコロナ禍で閉鎖された状態のまま、「受動喫煙対策が十分に取れていない(周囲に煙が漏れる、人通りが多い場所にある、など)」との理由で今年8月末に完全撤去された。

別の1カ所(閉鎖中)も周辺の公園再整備に伴い、いずれ撤去される見通しという。閉鎖中なので気づかれにくいが、同じような事例はあちこちで確認できる。

コロナ禍とほぼ同時期に進んだ「受動喫煙対策」

ところで、喫煙所をなくす動きは実はコロナ禍の前から始まっていた。2019年7月に受動喫煙対策を強化する「改正健康増進法」が一部施行(全面施行は20年4月から)。兵庫県でも、より踏み込んだ改正受動喫煙防止条例が施行された。これを機に、学校や病院、官公庁などは全面禁煙となり、飲食店や多くの人が利用する施設にも様々な規制が設けられている。

屋外の喫煙所についても配慮が求められ、コンビニなどの前から灰皿が姿を消すようになったのもこの頃から。こうした受動喫煙対策の動きと軌を一にしながら、感染症対策のための「喫煙所の閉鎖/撤廃」も一気に進んだようだ。

10月以降の対応は

屋内にある商業施設などの喫煙所も、コロナ禍以降は閉鎖されたところが多い。

「近隣で喫煙できる場所が少なくなったことで、うちの喫煙所を利用する人がすごく増えたんです。狭いスペースに密集することを避けるのが難しい状況になり、やむを得ず閉めました」

2020年4月末から使用を禁止している商業施設「神戸サンセンタープラザ」(神戸市中央区)の担当者は、閉鎖を決めた意外な理由をそう明かす。今後再開するかどうかは、まだ決めていないという。

また、館内全ての喫煙所を閉鎖している神戸市内の別の大規模商業施設の担当者も「今のところ、10月以降も再開するメドは立っていません」と話し、やはり当面は使用禁止を継続する方針。このように、緊急事態宣言が解除されてもすぐには再開せず、感染状況の推移などを踏まえて慎重に判断する施設管理者が多いとみられる。

一方で、神戸市の担当者は「屋外に設けた喫煙所に関しては、そもそも『路上喫煙をさせない』ために設置したもの。外で煙草を吸える場所がなくなると、また路上喫煙が増えてしまう」と警戒。実際、三宮界隈のビルに挟まれた路地裏などが“隠れ”喫煙スポットになってしまっている現状もある。市は喫煙者の権利にも配慮し、JR元町駅南側の喫煙所は10月以降に供用を再開する方向で調整しているという。

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