先日、久しぶりに病院にきてくれた未来(みく)ちゃん、4歳の男の子です。未来ちゃんは全盲です。赤ちゃんの時に保護されましたが、すでに、目がどうにもならない状態でした。
保護された当初は瀕死(ひんし)の状態で、しばらく入院していましたが、生命力の強い未来ちゃんは日増しに元気になっていき、目の状態も時間をかけてだんだんと良くなりました。とはいえ、眼球もなく、写真のように両目ともまぶたが閉じた状態です。それなのに、お世話や治療をする私たちにおびえることもなく、甘えたり、遊びたがったり、とても活発でした。
入院当初から、退院後は保護してくださった方のおうちに迎えてもらうことが決まっており、先住猫もいるということでしたので、体調が良くなってからは院内猫や犬にも協力してもらって、社会化トレーニングもしました。院内の長老猫に遊んでもらったり、未来ちゃんと同じように目が見えない犬と触れ合ったり、おもちゃで遊んだりと、未来ちゃんにいろいろな経験をしてもらいました。
何よりすごいのが遊び方でした。目が全く見えないのに、紙で作ったボール遊びが大得意。前足でボールを飛ばして、走って取りに行き、またキック。普通の子猫とまったく同じ動き、スピード感も全く同じでした。このような様子をブログで発信したところ、多くの飼い主さんから「勇気づけられた」「元気をもらった」などのお声をいただきました。
先日、久しぶりに会った未来ちゃんは、とても大きくなっており、おうちでもやんちゃぶりを発揮して楽しく過ごしているそうです。保護された当時からの未来ちゃんとの時間がよみがえり、あの時、未来ちゃんが教えてくれた生きる力の強さ、感動を改めて思い出しました。未来ちゃん、ありがとう。優しい飼い主さんと、これからも幸せに元気に過ごしてくださいね。
◆小林由美子(こばやし・ゆみこ)獣医師。1990年開業の埼玉県ふじみ野市「こばやし動物病院」院長。米国で動物の東洋医学、自然療法を学ぶ。治療はもちろん予防やしつけなどにも造詣が深く、講演活動も行う。ペットと飼い主双方に寄り添う診療が信頼を得ている。