弱々しかった子猫、手術を乗り越え我が子に 元気を回復、先住猫もいたわる優しい猫となり夫婦のかすがいに

渡辺 陽 渡辺 陽

2匹目を迎えよう

チャンクくん(オス、1歳7か月)は、2020年5月頃、捨てられたか、もしくは親猫とはぐれてしまったようで、もう1匹の子猫と一緒にいた。発見した人が猫の保護をしている動物病院に託し、その後、精密検査を受けたという。チャンクくんは生まれつき胸骨が狭く、心臓を圧迫していたので、プレートを埋め込む手術をすることになった。

東京都に住む神谷さん夫妻は、2020年3月、この動物病院からぶん太くんという保護猫を譲り受けた。ぶん太くんはすぐに懐いたが、神谷さんたちにかなり依存しているようで、ひどい夜鳴きや留守中の粗相に悩んでいたという。

猫好きの夫妻は、いずれは2匹目を迎えよう決めていた。保護団体の人からも「猫が若いうちのほうが仲良くなれる」と、早めに2匹目を迎えることを勧められていたので、早速、施設に見学に行った。

「あらかじめぶん太と合いそうな女の子を写真で紹介してもらっていたので、検診がてらぶん太を連れて、その子とお見合いしました。でも、残念ながら、その子は私たちやぶん太にあまり近寄らず、ぶん太もずっと物陰に隠れていました」。

すると、その子と一緒に保護されて、仲良しだったという子猫、チャンクくんが隣の部屋から姿を現した。チャンクくんは心臓の手術を控えていたので、まだ里親を募集していなかったが、神谷さんはチャンクくんに一目惚れした。

「チャンクは私たちにまったく物怖じすることなく、よく甘えてくれて、私が実家でずっと飼っていた相棒(猫)にどことなく似ていたんです。ぶん太はずっと隠れていたのですが、チャンクがすごく興味津々で、果敢に距離を詰めて、ぶん太もまんざらでもないようでした。その様子を見て、この子にしようと決めました」

チャンクくんは心臓の手術を数日後に控えていたので、経過次第ということで、その日は一旦帰宅した。

よく食べて、大きくなれ!

2020年8月、手術も無事に終わり、容態も良かったので、団体から無事にトライアルを始められると連絡があった。

「その日はちょうど休日で買い物に出かけていましたが、早く会いたかったのですぐに私たちで迎えに行きました。連れて帰る道中は、キャリーの中で不安そうに鳴いていて、声が少し枯れていました」

ぶん太くんとはゆっくり接触させるつもりだったが、2匹ともお互いに興味津々で、翌日には2匹仲良くケージに入っていた。

「事前に先住猫と新入り猫を引き合わせる手順を入念に調べて準備していたのですが、そんな必要はなく、あっさりと仲良くなってくれてよかったです」

名前の由来は、グーニーズという海外ドラマに登場する、おっちょこちょいで食べることが大好きなぽっちゃりした男の子『チャンク』なのだという。生まれつき胸骨に異常があり、初めて会ったときは、小さくて細くて弱々しい印象だった。グーニーズのチャンクのように、やんちゃでよく食べて大きくなってほしいという願いが込められている。チャンクは、「(肉などの)塊」という意味だが、本当に肉の塊のようにふくよかで、まだまだ大きくなりそうだ。

言葉は分からないが通じ合える

チャンクくんは、子猫の頃からとても活発だった。興奮して走り回った時に壁にぶつかり、驚いたような表情でこちらを見ることがある。

「そんなちょっとおバカな姿がまた可愛くてたまりません。最近は猫らしくなりましたが、鳴き声や仕草が本当に犬みたいで、この子は犬に育てられたのかなと疑ったほどです」

チャンクくんは、活発過ぎてぶん太くんによく怒られているが、ぶん太くんが胃腸炎でぐったりしてしまい、具合が悪そうにしていると、持ち前の素早さで駆け寄り、心配そうに毛繕いをしたという。

「うにゃうにゃ鳴きながら、ぶん太を心配しているように思えて、おバカだけどなんて優しい子なんだ…と親バカ全開で感動してしまいました」

2匹を迎えてから、神谷さんは、家の中が今までよりも格段に明るくなったと実感している。「今日はこんな面白いことをしていた、あんなイタズラをしていた」など、話題はいつも猫たちのこと。仕事から帰宅して、猫たちをモフりながら今日の出来事を話している時間が毎日の癒しで、活力になるという。

たまにちょっとした意見の食い違いが生じて、少し夫婦の間にいつもと違う空気が流れることがあるが、2匹がタイミングよく間に入って鳴き始め、良い空気に変えてくれる。

「猫はマイペースな生き物だと思っていましたが、私たちのことをよく観察していて、感情まできちんと感じ取っているのだと感心しました。言葉は通じませんが、表情や仕草でなんとなく気持ちが分かる気がします」

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