モデルガンで迫りくるゾンビを倒せ!サバイバルホラーゲームの世界が“現実”に…「パラサイトZ」大阪に出現

平藤 清刀 平藤 清刀

与えられたミッションは、とある施設に潜入して「アンプルを回収すること」。しかし、そこに足を踏み入れると、危険生物に寄生されたゾンビが容赦なく襲ってくる。参加者はゾンビを撃退しながら、ミッションを遂行しなければならない―。

ゾンビを撃退してミッションを遂行せよ!

昨年10月1日、大阪・南港ATCに、モデルガンでゾンビを撃退しながらミッションを遂行するサバイバルゲーム型のエンターテインメントがオープンした。

ゲームのストーリーは次のように設定されている。

「あなたはある企業による『永遠の若さ』を手に入れられる新技術の“被験者”として一般公募から選ばれ、大阪南港ATCへとやってきた。しかしそれはすべて、仕組まれた罠だった。

安全だったはずの試験場は、世界で最も危険な空間だった。危険生物に寄生された人間。やつらはもう人間ではない。怪物だ。近づくと寄生されてしまう! 生き残るために銃を使え! 施設内に置かれたアンプルを回収しながら、出口まで走り抜けろ!

命をかけた脱出への戦いの幕が切って落とされる」(公式サイトより)

ここで使われる銃はプロップガンという、少量の火薬で作動するモデルガン。操作方法は実銃と同じで、引金を引くと火薬が撃発。遊底が後座して薬きょうが排出され、リアルな発射感覚を味わえる。弾は発射されないが、赤外線デバイスが装着されていて、ゾンビの首から上に当たったら倒れる。

参加者はゲームを始める前に、銃の扱い方、安全管理、薬きょうが詰まったりうまく装填されなかったりというアクシデントへの対応法について、スタッフからレクチャーを受けたあと、いよいよ施設へ潜入する。コースにはいくつかの謎解きが用意されていて、それを解かないと先へ進めない。しかも、ゾンビがいつどこから襲ってくるかも分からない恐怖で頭がうまくまわらず、かなり焦る。

襲ってくるゾンビを撃ち、命中すると5秒間だけ動きを止められる。5秒経ったらゾンビは復活して、再び襲いかかってくる。かといって撃ちすぎると、すぐに弾がなくなってしまう。弾倉には7発しか入っていないのだ。

しかもゾンビは危険生物に寄生されていて、一定の距離以内に近づいたら自分が感染する。潜入前に銃と一緒に渡されたモバイルメーターが感染レベルを表示し、最後まで上がり切ってしまうとゲームオーバー。

ホラー、サバイバル、発射の爽快感、謎解きと緊張感の中で身体と頭を使う、新しいタイプのゲームだ。

意外! モデルガンは日本独自の文化

パラサイトZが提供する「モデルガンを使ったエンターテインメント」が世界初である理由を、運営会社の株式会社レイデバイスウエポン常務取締役・野島務さんに聞いた。

「モデルガンを使ってゾンビを撃つアトラクションとしては、社内調査で把握したかぎり日本どころか世界にも例が見当たりませんでした」と前置きして、こう続ける。

「外国では、モデルガンなどリアルな形状や構造の玩具銃を所持するだけで、罰則が与えられることがあります。アメリカでさえ、厳しく規制される州があるほどです」

ところが日本では、そもそも一般人に実銃の所持を禁じているという前提があるためか、モデルガンには寛容だという。

「日本はメーカーの自主規制もあって、オモチャの文化として許容していただいているんだなと思っています」

コロナ禍でオープンした意図は?

世界中が「感染」にデリケートになっていた昨年10月のオープンだったが、野島さん曰く「狙ったわけではない」と。むしろその逆で「タイミングの悪さは一入(ひとしお)ですよねぇ」と肩を落とす。それでも「こんな時期に……」という、批判めいたクレームは皆無だそうだ。

パラサイトZを発案したきっかけは、エアガンを撃ち合うサバイバルゲーム(サバゲー)の欠点からだった。野島さんの会社は、同じ系列会社で屋内型のサバゲーフィールドを運営している。サバゲーは基本的に、被弾した当人が「ヒット!」とコールして退場する「正直な自己申告」が前提で成立する。ところが、被弾してもヒットコールせずにゲームを続ける「ゾンビ行為」をやる者がいて、参加者どうしでしばしばトラブルになる。

そこで野島さんの会社では、BB弾が当たったことが分かる着弾感知システムを開発した。さらに、いくつかの企業から「空いている土地にサバゲーのフィールドを入れたい」という相談もあった。

ところが実際のサバゲーを見せると、弾を発射すること自体が危険視され「弊社ではリスクを負いかねます」ということで、頓挫することが多かった。

「だったら弾が出なければいいでしょう」ということで、火薬を使ったモデルガンの発想に行きついた。

「動作は実銃と同じだけど弾は出ない。そういう安全且つ発射感の楽しさを、撃ち合いとして成立できないかということです。弾を撃つ代わりに赤外線デバイスをつけて、当たり判定をとっています」

こうしてアイテムはできたが、いちばんの問題があった。

「商品化した場合、高価になります。それを、撃ち合いを楽しむためだけに、誰が買うのか?」

だから、まずは「こういうものがあります」ということを広く知ってもらい、少しずつ認知度をあげていく。それと並行して、全国にあるサバゲーフィールドへレンタルして使ってもらおうという計画が立ち上がった。

だが、それにも長い時間がかかる。

「ならば、実体験をしていただきましょう。プレイステーションやネットゲームでゾンビゲームが流行っているのを見て『みなさん、ああいういのが好きなんだなあ』と。それを実際にやってみようということで、できあがったのが今の形です。新型コロナが流行る、ずいぶん前から準備していました」

参加者とゾンビとの距離を一定に保つための仕掛けも、計画の当初から決まっていた。それがソーシャルディスタンスを意識する生活様式に“たまたま”合致しただけだという。

ミッションクリアはオープン以来たった2組

火薬を使うため対象年齢を18歳以上にしているが、10~17歳は親御さんの許可をとり、一緒に入ってもらえば参加できる。

「10歳未満のお子さんにはモバイルメーターだけつけて、銃は親御さんにもっていただきます」

謎解きの最中もゾンビが襲ってくるから、対ゾンビ戦闘と謎解き担当で1組あたり4~6人が理想だそうだ。

「お客さんの年齢層は20~60代のちょっと前ぐらい。最近では若い女性のグループが増えました」

謎解きあり、ゾンビの襲撃あり、ミッションあり、そして銃を撃つ高揚感もある。一度にさまざまな要素が絡み合うせいか、ミッション遂行は意外に難しい。成功した参加者は、オープン以来2組しかいないという。だからこそ「今度こそリベンジしてやる」という気持ちを生み、リピーターになるのだろう。

    ◇   ◇

取材日の時点でシステムにエラーが発生しており、本来のルールでのゲームができなくなっている。代替ルールとして「ゾンビエスケープ」という、謎解きなしでゾンビを撃退しながら進んでいくゲームが行われていて、筆者も体験したが、けっこうなスリルを味わえる内容になっている。

詳しくはパラサイトZまで。

▽公式サイト
https://www.parasitez.jp

▽場所
大阪市住之江区南港北2丁目1番10号
アジア太平洋トレードセンター内 大阪南港ATC O's棟3F

▽アクセス
ニュートラム「トレードセンター前」駅で下車

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