「クラスLINE」と呼ばれる、学校のクラスメートがつくるLINEグループ。小学生の間でも高学年になると作られることが多く、便利なものではありますが、トラブルが起きて友達同士が被害者・加害者になることがあります。集中攻撃がエスカレートした実際の事例をご紹介しましょう。
トラブルの発端は些細な事点「水風船遊び」だった
小学校6年生のお話です。放課後、女の子グループが公園で水風船を投げて遊んでいました。するとなにかの拍子に、割れた水風船の水が同じクラスの別の遊びをしているグループの男の子にかかってしまいました。
「かかった」「かからない」「たいしたことじゃない」「なによその言い方」こんな感じで、ちょっとした言い争いにはなったものの、その場はすぐにおさまりました。
ところがです。
その日の夜、これがLINEの世界に飛び火します。
今や小6といえば、習い事や塾に通う子も多いため、スマホを持つことがあります。自分のスマホがなくても、家庭のタブレットでLINEをする子たちもいます。
昼間の出来事がクラスLINEで話題になりました。
最初は公園で水風船で遊んでいた子どもたちの間で「謝りなよ」「なんで?もうさっきごめんって言った」とやり取りをしていましたが、水がかかった、濡れたという子が、ある子を特定して「ブス」などと書いたり、バカにしたようなスタンプを送りました。
クラスLINEなのでメンバーが大勢います。LINEなので言葉のやり取りなのですが、次第にエスカレートしていき、実際に公園で遊んでいたわけではない子たちが「バカ」「ブス」のメッセージに、いいね!と反応。収拾がつかない状態になっていきました。
カオス化するクラスLINE
そういう子に向かって、また、何か言う子もでてきます。あまりにLINEがなりっぱなしなので抜ける子もでてくるし、そうかと思えば途中参戦してきて状況を把握していないにも関わらず、茶々をいれてくる子も出てきます。カオスですね。
ここでのポイントは、出来事には全く関わっていないのに、やたらと人の言葉を煽ったり、「ブス!おもしれ~」「いっぺん死んだ方がいいわな」と突っ込んできたり、それに、いいね!いいね!いいね!と大勢の子たちがのっかってきたことです。
騒動の張本人たち以上に、周囲があおりたてる。まさに火に油を注ぐ状態です。
次第にクラスLINEは、いくつかのグループにわかれて、ターゲットが絞られていきます。
誰かの言った悪口にのって、言い合いをしていたのが、気づくと「ひとり」が的になり、的に向かって矢を放つように、クラスLINEのその他大勢が「水をかけた女の子」を集中攻撃し始めたのです。
そもそもクラスのLINEで公園で起きた出来事から言い合いになったはずなのに、関係のない人が、深く考えることもなく「ブス」に便乗して、「ブタ」といい、そのメッセージに「ぶーぶーぶー!」と次々と畳み掛けてきます。
テレビドラマを見ながら、友達とLINEで「うそー、やばくない?」「なにこの人、最低じゃん」と感想をやり取りするのとはわけが違います。
明らかにひとりの子がターゲットになり、実際にやった・やられた子たち以上に、面白おかしく、クラスLINEで始まった「リアルドラマ」に、他人の言葉にのっかってしまいます。
無責任なリツイートが炎上を招くこともある
これは小学校のLINEで起こった事ですが、大人の世界ではどうでしょうか。
インターネットの誹謗中傷問題も、ある種同じことです。
よくTwitterは、炎上します。きちんとした理由がある事もありますが、憂さ晴らしとばかりに攻撃的なことをしてくることもあります。
攻撃だけでなく、よく問題になるのが、何かの事件が起きた時に、「この人が犯人だ」と嘘やデマの記事をリツイート(他人のツイートを自分のフォロワーに向けて拡散すること)する事です。
「ネットでリツイートするのは連帯保証人と同じ」
これは、以前ネット上で殺人犯に仕立てられた、お笑い芸人のスマイリーキクチさんが言っていた言葉です。
キクチさんは1999年、凶悪事件の殺人犯とのデマがネット掲示板に書き込まれたのをきっかけに、誹謗中傷にさらされ続けました。9年後に真剣に捜査してくれる刑事に出会うことができ、犯人が一斉摘発されましたが、現在でも被害は続いているといいいます。
本来は、ツイートしている記事の内容を保証していることに他ならないのに、世間にばらまいて、火に油を注ぎ、まさに炎上するのを楽しんでいるかのような人々が、残念なことに一定数います。さらにもっと怖いのは、無意識に行っている人も多いということです。
無意識な人はそこまで暴言を吐くことはなくても、面と向かって言い争うわけではないので、気軽に、深い意味もなくリツイートし、リツイートした記事は羽がはえたように飛び回ります。
そして的になった人に向けて、クラス中どころではない、時に真実とかけ離れていても、「的」となった人とは関係ないにも関わらず、みんなお構いなしに一斉に集中砲火を浴びさせる。徹底的に壊滅しようとする。もはや何の話だったのかわからなくなることもあります。
放った側は1本の矢でも受ける側は「何百本もの矢」
始まりは些細なことでも、SNSで関係のない人たちが参加し、あるいは周囲を巻き込むことで「標的」を作ってしまう。ひとたび「的」ができると、誰も彼もが一の矢、二の矢を放ってしまう。
刺さる痛みを想像することもなく、あるいはその矢が武器であり、人を傷つけていることさえ気づくことなく、山のような人たちが矢を放っていく光景はとても怖いことです。
トラブルの当事者同士がもめるのは理解できますが、事情を知らない人がそこに加わるのはどうでしょうか。先程の例、最初は公園での水風船の水がかかった、それだけのことで結局この女の子はひどく傷つき、学校に行くのも嫌になってしまいました。
きっかけは小さなことでも、ひとりの子が的になってしまい「集中攻撃をうけてしまう」ということを前提に、子どもたちにはSNSの使い方、相手への誹謗中傷が罪となることも踏まえて話しておきたいことですね。