虹の橋のたもとに旅立った、あの子からの手紙 「愛猫とつながっていたいから」届け続ける女性の物語

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

虹の橋のたもとに旅立った愛犬・愛猫からお手紙が届いたら、どれほど嬉しいでしょうか。でもそれは、叶わない夢…。だからこそ、虹の橋のたもとからの手紙を書いている女性がおられます。Aさんです。亡くなった彼女の愛猫のレンくんが、お友達の写真を撮って送ってくれるという設定です。

もちろん、お手紙を書いているのはAさんです。しかし、届けられた人は「向こうであの子は元気でやっている」と喜び、癒されるのだそう。

Aさんは夫とレンくんの2人と1匹暮らし。子供のいない夫婦ですので、2人でレンくんを我が子のように可愛がっていました。夫婦が出会ったころに譲渡され、夫婦の歴史をずっと見つめ続けていた猫でもあります。

レンくんは甘えん坊で、いつもAさんのそばにいる猫。年を取って体温調節が難しくなり猫用コタツを与えると、大喜び。ずっとそこで過ごすようになりました。一緒に寝てくれなくなったので、Aさんはちょっと寂しかったといいます。それでも、毎朝起こしに来てくれていたんですって。幸せな日々でした。

ところが、寄る年波には勝てません。レンくんは13歳になったころから、体調を崩しがちになっていました。慢性腎不全です。オス猫は特にかかりやすいこの病気を抱え、福島県から千葉県、そして栃木県と夫の転勤についていきました。その都度、動物病院も変わりました。

こうなると、相性の良い病院悪い病院が出てきます。栃木県の病院は、どうもレンくんと相性が悪い。どんどん症状が悪化していきました。Aさんの焦燥感は高まります。

「このままならレンが……」

そう思うと、居ても立っても居られません。最善の医療を我が子に受けさせたいと思うのは親心です。レンくんと相性の良かった動物病院、それは福島県にあるのですが、すぐさま予約を入れます。そして、夫と福島県の実家に電話を入れました。

「レンのために福島県に帰る」

その日のうちに栃木県から福島県へ移動です。2017年5月のことでした。当時は専業主婦だったAさんはまず実家に身を寄せ、2カ月後にレンくんの通院のために福島県で部屋も借ります。夫は2年間の「単身赴任」をし、2019年には福島赴任となり家族全員がそろいました。

行き慣れた相性の良い病院に通い始めると、レンくんは獣医師がビックリするほど元気に。このまま症状が安定してほしいと願っていました。

しかし、レンくんはもう18歳。若いころのように体力はもちませんでした。2021年4月15日、Aさんを起こしに来た時は普段通りでしたが、その後に急変。病院へ…と思っている間にパタンと倒れました。病院で検査をすると、血糖値が物凄く高い。糖尿病も併発していたのです。

この日は補液と注射をし、インシュリン注射はまた明日ということに。4月16日、インシュリン注射をしてもらって様子を見るのですが、15時ごろいつもと違う様子に不安が…。夜勤明け夫で寝ている夫を起こすと、その日は休みを取ってくれました。実家の母親にも連絡をします。姪も駆けつけてくれました。

家族に見守られ22時25分、レンくんは虹の橋のたもとに旅立ちました。18歳になり5日後のことです。明日もあると思い、ゆったり入れるキャリーバッグと介護用ベッドを注文した日でした。

レンくんを見送ったあとのAさんは抜け殻のよう。

「もしかすると私がレンを死なせたのかもしれない」

そんな思いまで浮かんできました。そんな時、Aさんを励ましてくれたのがTwitterのフォロワーさんたちです。もちろん夫や実家の家族も支えてくれましたが、Twitterの仲間たちの支えはAさんに前を向かせる力になりました。

それから、虹の橋のたもとからの手紙を書き始めたのです。最初はフォロワーさんへのお礼のつもりから始まりました。それが評判になり、今では60名ほどの方にイラスト付きの手紙を届けたんですよ。

みんな、何かしら後悔があるから、「大丈夫だよ」という愛犬・愛猫からの言葉に心を救われるよう。Aさんもまた、レンくんと繋がっているような気持ちになり、手紙を書くことで救われています。

第一便のお届けがそろそろ終わります。お届けが終わったら夏休みなのだそうです。

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