保護した猫は妊娠中 自宅での出産準備を進めるも、猫が行方不明に「まさかこんな所で出産を」

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

埼玉県のA家は、プルちゃんと名づけられた猫と長年一緒に暮らしていました。このプルちゃんが虹の橋のたもとに旅立ったあと、家の中は灯が消えたかのよう。プルちゃんを想っては寂しい気持ちになっていました。

「また猫と暮らしたい……」

そう願っているA家の人たちの前にひょいと現れたのが、サバトラの美しい猫です。猫の通り道になっているA家の庭に頻繁に顔を出してくれます。とても人懐こく、触らせてもくれたのだそう。

A家の人たちは、このままうちの子に…と考えますが、これほど人懐っこいなら飼い猫かもしれない。そう思って、飼い猫にはなかなかできませんでした。そんなA家の人たちの想いと裏腹に、美しい猫は遂には家にまで上がりこんでくつろいでいく始末。

「もしかすると、うちの子になりがっているのかも」

そう考えたA家の人たちが連絡をしたのは、地域猫活動をしている団体です。この辺りの地域猫や外飼い猫のことなら何でも知っています。

団体の方にその猫を見てもらい、飼い猫でないと確認していもらいます。違うならこのまま地域猫として、今まで通り気軽にうちに来てもらうようにしようかと思っていると、団体の方が言いました。

「赤ちゃんがいますよ」

もうビックリです。それでも新しい命が育まれていることは嬉しいこと。しかし、もし地域猫にしたいなら、お腹の子は下ろさないといけないと告げられました。つまり、どこかの家の子にする以外、出産をさせてあげられないのです。

A家の人たちは迷うことなく、その猫を「うちの子にする」と決めました。今年の3月21日のことでした。

この子は「ちょび」と名付けられ、本格的にA家で暮らすことになります。名前は最初「ちび」だったのが呼びにくいというので「ちょび」となったんですって。もうお外には出さないと決め、家の中に入れます。

ちょびちゃんは野良猫ですから、外を恋しがって激しく抵抗するかと思いきやこはいかに。初日こそ、申し訳程度に外に向かって鳴いていましたが、2日目からソファーにゴロン。3日目にはお父さんにくっついているありさまで。これにはA家の人たちは嬉しい驚きです。

4月も中旬を過ぎ、そろそろ生まれるころかとA家の人たちは段ボール箱等を用意し始めました。せっかく人間がいるのだから、快適な出産をさせてあげたいという想いからです。普段これだけ甘えてくれるのだから、出産の時も甘えてくれるだろう。甘えてほしい。

そうやって準備をしていた4月19日、ちょびちゃんが行方不明に…。どこか隙間から外に出たのか、いやあの子はもう外に出ないだろう。だったら、どこへ…。家の中だけでなく庭や家の周りも探し回りました。

家族が疲れ果てて帰宅すると、普段使っていない物置の中から何やら聞こえてきます。耳を澄ましてみると「みーみー」と子猫の鳴き声が聞こえてくるではありませんか。

「ここで出産したんだ!」

そっと中をのぞくと、カラーボックスの隅にちょびちゃんと子猫たちの姿が見えました。ちょびちゃんが産んだのは5匹!やったー!

発見したのは、長女のTさん。Tさんが家族に伝えると、家族もこっそり見にいきました。ただ、これがちょびちゃんには居心地が悪かったらしく、今度はもっと奥の方にお引越し。こっそりも見られなくなりました。

GWに差し掛かったころ、ようやくちょびちゃんから子猫を紹介してもらえました。それまでは触ろうとするとあの甘えん坊のちょびちゃんが「シャー!」と言っていたのだそう。可愛い可愛い子猫に、A家の人たちはメロメロです。

家族のスマホは猫画像でいっぱいに。日々成長する子猫の姿は、記録せざるをえません。子猫が部屋の外に出ないように設置したバリケードは、もうやすやすと飛び越えられるようになっているんですって。

プルちゃんが虹の橋のたもとに旅立ち、灯が消えたかのようになっていたA家。それがちょびちゃんと子猫たちのおかげで、笑い声が絶えない家になりました。

この様子にきっと虹の橋のたもとにいるプルちゃんも喜んでいるでしょう。自分がいなくなったことで沈んだままじゃ寂しいから。

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