怖い!犬の歯周病 毎日、歯磨きすればいいのは分かっているけれど、どうすれば習慣にできる?

岡部 充代 岡部 充代

「3歳を過ぎた犬の約80%が歯周病予備軍と言われています」

 そう警鐘を鳴らすのは、犬の歯磨き用品を42種類も発売している『トーラス株式会社』の代表取締役社長・赤津徳彦氏です。最近では「犬にも歯磨きが必要」ということが知られてきましたが、子犬のときから慣れていなければ、多くの犬は口の中に歯ブラシを入れられることを嫌がるでしょうし、ゴシゴシされるなんてもってのほか!指に巻いて使う歯磨きシートなども売られていますが、指を受け入れない子も多く…結果的に「何もできていない」「歯磨きガムを与えている」というところで止まっている飼い主さんが多いようです。

 そこで、一人でも多くの飼い主さんに犬の歯磨きの大切さと方法を知ってもらおうと、6月4日の『虫歯予防デー』に赤津氏が講師となりオンラインセミナーが開催されました。

 そもそも人間と犬では口内環境が異なります。人間の唾液はpH6.8~7.0の中性。これが飲食物や口腔内細菌の影響で酸性に傾くと、いわゆる虫歯になってしまいます。一方で犬の唾液はpH8.0~9.0のアルカリ性。虫歯菌が好む酸性の環境にはならないため虫歯にはなりにくいのですが、その代わり歯石が形成されやすく、赤津氏によれば「歯垢から歯石になるスピードは人間が20日前後なのに対して、犬は48時間を過ぎると歯石になってしまう」とのこと。しかも、歯ブラシや歯間ブラシ、洗口液などを使ってマメにお手入れしている人間に比べて、大半の犬は何もしていないのですから、歯周病予備軍が増えるのも当然と言えます。

 歯茎が腫れたり赤くなったりする「歯肉炎」から顎の骨が溶けてしまう「歯周炎」へと進み、歯を抜かなければならなくなったり、さらに悪化すると目の下に穴が開いてしまうことも…。犬は自分で歯を磨けませんから、飼い主さんがしっかりケアしてあげるしかないのです。

 

 ただ、いきなり歯ブラシで磨くのはハードルが高いため、段階を追ってということになります。赤津氏がセミナーで伝えていたのは、①犬を抱っこし、落ち着いてきたらマズルをやさしく触る。②歯が見えるように唇をめくる。③好きな缶詰の汁や歯磨きジェルを指につけてなめさせる。④犬歯を触る。⑤指を徐々に奥歯のほうまで入れる。⑤歯磨きシートや指サックなどでやさしく磨く。⑥歯ブラシにジェルなどをつけて磨く。まずは犬歯から。徐々に奥歯へ。

「気を付けてほしいのは強い力でゴシゴシ磨かないこと。歯の表面のエナメル質が人間に比べてとても薄いので、かえって歯を傷つけてしまいます。歯ブラシはやわらかい毛で、その子のお口のサイズに合ったものを。抱っこが難しい犬は1人が保定して1人が磨く、というのをやってみてください。徐々に慣らしていくにはご褒美のオヤツや歯磨きガムもうまく使いながら。歯磨きガムは犬に渡してしまうと左右噛みやすい側でしか噛まないことがあるので、飼い主さんが手で持って与えましょう。寝ている間は唾液が出にくく菌が繁殖しやすいので、寝る前にあげるのがいいですね」(赤津氏)

 最近よく耳にする「無麻酔歯石除去」は?

「見える部分の歯石しか取れないので、それで安心してはいけません。歯周ポケットに汚れをためないためには日々のケアが大切です。犬が歯周病になってしまうと獣医さんでも完治できません。愛犬の歯を守れるのは飼い主様だけ。あきらめたり放置したりせず、毎日の歯磨きを習慣にしてください」(赤津氏)

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