離れ離れになった仲良し野良猫
夏子ちゃん(メス)は、野良の三毛猫だった。東京都に住む酒井さんは、2012年の秋に秋生くんという野良猫を保護したのだが、夏子ちゃんと秋生くんが一緒に行動しているところをよく見かけたという。しかし、秋生くんを保護したので2匹は離れ離れになってしまった。
「秋生とまた一緒にさせてあげたいと思い保護を試みましたが、秋生とは性格が正反対で、人間を極端に怖がります。何度も捕獲に失敗しました。それで夏子を保護するのが翌年の夏まで伸びたのです」
最終的には、酒井家の初代保護猫五郎くんを保護したときと同様に、部屋の中にササミを置いておびき寄せる方法で家の中に迎え入れたという。
家庭内野良猫状態
2013年7月28日、捕獲に成功したが、夏子ちゃんはとにかく人間が嫌いで、触らせてくれなかった。
「こちらに怪我をさせようとするような攻撃的な敵意を明らかにむき出しにしておりましたので、こちらも無理に手を差し伸べることはしませんでした」
人間に対してはシャー!フー!と攻撃的な姿勢を示す一方、秋生くんには擦り寄り、友好的な態度を見せていた。酒井さんは「それならば猫同士に任せよう」と、秋生と一緒の部屋に住まわせて、餌とトイレ以外では干渉しないようにした。
「秋生と一緒であれば生活に文句はないようで、外に出たがって騒ぐようなこともありませんでした。そうして8年が経ち、夏子はいまだに滅多に触らせてはくれません。私が部屋に入ると隠れてしまうことを繰り返し、何日も姿を見せてくれないこともあります。家庭内野良猫状態です」
懐かないからなつこ
夏に来たので夏子と命名したが、そのうち、「懐かないからなつこ」ではないかと思うようになったという。
人間には絶対懐かない反面、秋生くんのことは大好き。秋生くんと再会するまでに1年近い空白期間があったので、忘れているのではないかと思いながら会わせてみたところ、すぐに秋生くんに擦り寄ってゴロゴロ言い始めたという。
「ちゃんと覚えていたようなのです。他の先住猫とはそうはいきませんでした。また一緒にしてあげられてよかったと、大いに実感した瞬間でした」
あまりにも懐かない猫だから、夏子ちゃんに関しては、ちょっとしたことでも喜びになるという。
「懐かせてみせようとは思わず、猫には猫の生き方があるのだから、人間がそれに合わせてあげれば良いと思えるようになりました。それは他の猫に対しても同じです」