タレントのだいたひかるさんが乳がんの手術や再発を乗り越え、妊娠されたというニュースがありました。ずっとだいたさんのブログも読ませて頂いていて、私自身も不妊治療を長く続けていましたし、当時を思い出すともう、本当に良かったと思いました。
男の人には理解しづらいかもしれませんが、「がん」というだけでも怖いのに、治療を中断してまで自分と、そして自分の大切な人の遺伝子を残したい、子どもを産みたい、そして育てたい、というのはすごい決意だと思います。本当に心から「頑張って」と応援したい。「体を冷やさないでね、あったかくしてね」と思いながらブログを読んでいます。
だいたさんも私も凍結した受精卵を子宮に戻す方法でしたが、先日ソチ五輪で銀メダルを獲得したスノーボードの竹内智香選手が「卵子凍結」を決断したことも話題になりました。
常に新しく作られる男性の精子と違い、女性の卵子は生まれた時から数が決まっていて、初経が来ると毎月排卵されます。ですから20歳の時の卵子と30歳の時の卵子では妊娠のしやすさも違う。30歳の時の卵子を受精させて40歳で子宮に戻しても、卵子の若さは30歳の時のままですから、その後の成長にも大きな差が出るのです。
竹内選手はオリンピックのため過酷なトレーニングや試合日程もこなされる中での決断だったと思いますが、これに対し世間では「あえて公表しなくてもいいのでは」という声もありました。でも、私は「卵子凍結」という手段があるということを、勇気を持って多くの人に伝えてくれたことは、とても素晴らしいことだと思うのです。
だいたさんのように病を患う例もあれば、今は特定のパートナーが居なかったり、仕事が忙しかったりして難しいけれど、将来的には子どもを産みたい-など、さまざまな事情を抱えた女性がいます。
例えば某局の女性ディレクターは、ADの頃に妊娠出産をすると復帰時もキャリアはADのままなので責任ある仕事を任せてもらえない。だから仕事をバリバリしたいなら「ディレクターになるまでは子どもを作らない方がいい」とこっそりアドバイスしていると打ち明けてくれました。本来なら当然出産後に復帰してもキャリアを積めるシステムに変えるべきですが、今はこれが「現実」であり、システムが変わるのを待っている間にも時間は過ぎる。卵子の採取自体も年齢が上がると難しくなりますし、それなら将来的な安心を得る一つの手段として、日本産科婦人科学会も認めている「卵子凍結」を選ぶことは、「有り」だと考えます。
フリマサイトを運営する「メルカリ」が導入した卵子凍結をする社員への支援制度にも、想定以上の問い合わせや応募が寄せられたそう。「世界的に競争力のある企業」を目指すため多様な人材が活躍できる会社を創る、というこの取り組みに対し、「妊娠・出産と仕事の両立が出来る社会に変えなければ意味がない」という指摘もあり、確かにそれがド正論です。でも世の中は、正論だけでは動かないのも事実。それなら「卵子凍結を希望する女性が増える」というムーブメントが、社会を変えることにもつながるのではないでしょうか。
私も参加させて頂いている厚労省の「コロナ禍の雇用・女性支援プロジェクトチーム」では、リモートワークの普及で不妊治療がしやすくなったと報告されています。現政権では不妊治療を保険適用にする方針も示されましたが、いかにして不妊治療の負担を減らし、悩む人を減らせるか。そのためには不妊治療への誤解をなくし、正確な知識を伝える情報公開も必要です。その事で赤ちゃんをその腕に抱ける人が増えるのだということを知ってほしいのです。