「バルバスバウマーク」って知っていますか? 船に描かれている「暗号」みたいなマークの秘密

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 豪華な客船で優雅な旅。コロナ禍で現在ほとんどストップしてますが、船旅に憧れる人も多いのではないでしょうか。阪神間の港では神戸ポートターミナルや天保山など、大きな客船が来ると見物客で賑わいます。ちなみに、船の船体にはいろいろなマークが描かれているのをご存知ですか?

水面下で出っ張っている「球状船首」を教えてくれるマーク

 船の前の方、船首の辺りに描かれるポコッと出っ張ったようなマーク。これは「球状船首(バルバス・バウ)」と呼ばれる船首の形を意匠化したものです。

 船が航行すると「曳き波」と呼ばれる波が発生します。釣りなどで海辺に行くことの多い人だとよくご存じだと思いますが、結構強い波です。波って、エネルギーなんですよね。だからこの「波を立てる」ということは、そこに大きなエネルギーを使っている、つまりパワーを大きくロスしているということです。これを「造波抵抗」といいます。大きな曳き波を立てる船は、たとえば同じパワーでも速度が遅くなるとか、同じ速さでも燃費が悪くなるとか、そういうことですね。

 曳き波を立てるのは船首の部分の吃水部分、つまり水面に接する部分です。単純にいうと、ここで押し分けられた水面が盛り上がって波になるのですね。これを抑えるために考えられたのが、球状船首です。

 水面下に船首よりも先に飛び出した丸い部分を作ることで一旦水面を持ち上げて、その波が谷になったところに船首が来るようにする。つまり波を相殺することで曳き波を小さくしようというものです。アメリカのD.W.テーラーという人が1911年に発明しました。

 球状船首は戦艦大和にも採用されたというのはわりと有名なエピソードですよね。実際にあれでおよそ8パーセントほどエネルギーロスを減らす効果があったともいわれてます。

 ただ、球状船首はその球状の部分が水面の下にあってこそ本来の性能を発揮するので、たとえば積み荷が軽くて喫水線が低くなってるとかで、その球の部分が水面の上に見えてしまってる状態だと効果がありません。

 球状船首は水面の下で前方に出っ張っているので、小型の船などが知らずに接近すると危ないです。なので水面の上の部分に、「この船は球状船首になってますよ」と注意喚起するためにマークが描かれているのですね。このマークをバルバスバウマークといいます。

ほかにもいろんなマークがいっぱい

 このほかにも、よく見ると船にはいろいろなマークが描かれています。

 たとえば○に×を組み合わせた扇風機のようなマーク。これはスラスターマークといいます。この真下の水面下には、サイドスラスターと呼ばれる横向けのスクリュー(プロペラ)が付いています。このスクリューは船を両側に貫通していて、船を左右どちらにでも真横に押すことができます。船首側に取り付けられたものをバウスラスター、船尾側のものをスターンスラスターといいます。船が着岸したり離岸したりするときに、真横に移動したりその場で回転したりするのに使います。

 これも小型の船などが近くに居るときに、不意に水流に晒されると危ないので注意喚起のためにマークがつけられています。

 他にも、季節や海域ごとに船がどのラインまで沈んでもいいか(どれだけ荷物を積んでいいか)を表す満載喫水線ラインとか、タグボートで押すときにどの部分だったら押しても船がへこまないかを表すタグボートマークなど、船にはいろんな表示がされています。

 これからの季節、港で夕涼みなどをされる機会もあるかも知れません。そんな時、停泊している船を観察してみるのもまた面白いのではないでしょうか。

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