旅立った愛猫のために 老舗桐たんす工房の4代目が「ネコ仏壇」を作った理由「ペットは家族同然だから」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「ニャムアミダブツ」(南無阿弥陀仏)…家具の街で知られる福岡県大川市の桐里工房(代表者:三代目 稗田 正弘)がこのほど「ネコ仏壇」を製作。5月からクラウドファンティングサイト「CAMPFIRE」で販売を始めました。

ネコ仏壇は、文字通り猫専用の仏壇。名残惜しくも愛猫が虹の橋のたもとへ旅立ってしまったとき、その後もずっと思い出を大切にし、供養してあげたいという愛猫家の“想い”を叶えようと、猫専用の家具を手掛ける同工房が開発しました。一体、どんな仏壇なのでしょうか? 同工房の4代目稗田亮さんにお話を伺いました。

福岡・大川の老舗工房に届いた「ペット用仏壇がほしい」との声

同工房は明治45年創業の老舗桐たんす製造工房。福岡県特産工芸品である総桐たんすの製作をはじめ、桐材を使用した家具全般の開発・製作に取り組んでいます。

ネコ仏壇を作ろうと思ったきっかけは、百貨店の展示販売をしたときのこと。お客さんから「ペット用の仏壇みたいな商品はないかな?」と尋ねられたといいます。そこで猫専用の家具製作を手掛けていたこともあり、昨年10月から猫専用仏壇の開発に乗り出しました。完成後、今年1月にお披露目。5月11日に販売をスタートさせたそうです。

亮さんは「私も幼いころから犬を飼っています。ペットは長い間ずっと一緒にいると家族同然。ですが、残念なことに犬猫などペットは人とは寿命の長さが違うため、いずれお別れのときがやってきます。亡くなったあとは、ペットの写真をとりあえず飾っているというご家庭も多いかもしれませんが…今回、家族同然のペットをもっとねぎらってあげたいというお声をお客さまからいただきまして、猫専用家具を製作している当社がネコ仏壇を作ってみようと思いました」と話します。

「日本一軽い木材」桐を使用 クラウドファンティングで販売中

製作したネコ仏壇は、できる限り小さく、リビングにも置けるようにとシンプルなデザインに設計。手前下開きの戸を開き内部へ収納できるようにすることで、仏壇の邪魔になりがちな両開きの扉問題も解消しています。下開きの戸は、お供え物を置くことができる台(テーブル)にもなります。

素材は、同工房が得意とする「日本一軽い木材」桐を使用。桐たんすと同じように、伝統技法である組手※などをしっかりと施しているため、とても軽く、丈夫にできており、持ち運びも可能です。表面を焼いて、宇造り仕上げ(木目を立たせる)にしています。そうすることで色合いに濃淡ができ、木目を立体的に浮かび上がらせるので風情のある仕上げに。また、表面には防水処理を施しており水をこぼしても問題なく、水拭きで掃除ができるのでお手入れも簡単だとか。

クラウドファンティングでは、22万円(20%オフ)から限定で販売中。全国送料無料サービスとなっています。

※「組手」…材料を交差させたり直角に組む技法。

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町おこしの企画として「ネコ家具」が誕生 第1弾はネコベッド

亮さんによると、地元で「ネコ家具」を扱う会社は現在11社ほど。2017年、大川町の町おこしの企画として大川家具の「ネコ家具」が誕生したといいます。同工房でも、ネコ家具の第一弾として「ネコベッド」を製作。ネコベッドは、人間のベットの40分の1ほどにミニチュア化したものだとか。当初は海外からも購入の問い合わせなどが多数きたそうです。

その後、地元の祭りやイベントなどで同工房もネコベットをはじめ、試作中の「ネコベンチ」や「ネコイス」などを披露。愛猫家からの評判も良く、大川町では新たな家具のジャンルとして「ネコ家具」を確立させようと波に乗り始めたばかりでした。しかし、昨年(2020年)春ごろから新型コロナウイルス感染拡大が猛威を振るい、展示会やイベントは軒並み中止に。ネコ家具をお披露目する機会が失われてしまいました。

そんな先行き見えない状況の中で、チャンスが訪れたのです。昨年10月、福岡市内の百貨店でネコフェスティバルが開かれ、ネコ家具を展示することになりました。そのときに、足を運んだ愛猫家のお客さんたちから「もっとネコ家具を増やしてほしい」などと激励の声を掛けられ、新しいネコ用家具を手掛けようと奮起したといいます。そこで製作を始めたのがネコ仏壇でした。

柔らかくて温もりのあるネコイス…猫たちから大人気

さらに、今年2月には大川観光協会で「ネコ家具DIY」が開かれ、参加者はネコイス製作にチャレンジ。愛猫のためにと思い思いに作ったネコイスを持ち帰ったそうです。後日、参加者から「猫たちが取り合いするほど気に入ってもらった」などと画像を添えて報告があったといいます。

猫が取り合いうするほど居心地がいいというネコイスについて「素材の桐は、他の木材に比べて柔らかく肌触りがいいんです。さらに、段ボールや発砲スチロールのように保温性があるので、きっと猫ちゃんたちもネコイスを気に入ってくれたのでしょう」と亮さん。現在、猫がもっと近寄ってきてくれるようなデザインにしようと、ネコイスやベンチの試作を続けているそうです。

今後の目標は「ネコ家具の製作は、当初は大川家具の職人の技術、デザイン力などのPR活動としてはじめられた町おこしのプロジェクトでした。猫などのペットを家族に迎え入れる人が増えている中、新たな家具のジャンル『ペット家具』や『ネコ家具』といったものが確立していければいいなと思っています」と語ってくれました。

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クラウドファンティングなどに関するお問い合わせは、桐里工房(0944-86-3938)まで。

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■ネコ仏壇の概要■
名称 ネコ仏壇
販売料金 27万5000円(税込/全国送料無料)
サイズ 高さ43×幅30×奥行28cm
重さ 約5.4Kg
仕上げ 焼仕上げ

■クラウドファンティング
https://camp-fire.jp/projects/view/410727

■桐里工房ホームページ
https://kirikoubou.com/

■Twitter:桐里工房~ネコ家具製作木工所~@OkawaKirikoubou
https://twitter.com/OkawaKirikoubou

■Facebook:桐里工房@kirikoubo
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