18年間寄り添ってくれた愛猫はうつ病から救ってくれた恩猫 瓜二つの子猫を迎えて恩返し

渡辺 陽 渡辺 陽

キジッチくん(4才・オス)は子猫の時、大学の敷地内で保護され、保護団体のFacebookで里親を募集していた。石川県に住む川端さんは、その情報を見て「この子だ!」と思った。キジッチくんは、今まさに亡くなろうとしている川端さんの愛猫にそっくりの猫だったのだ。

今亡くなるかもしれない愛猫にそっくりの子猫

2016年9月8日、石川県に住む川端さんは18歳になるキジトラ猫を亡くした。亡くなる直前、川端さんは「この子がいなくなったら、もう猫のいない生活なんて考えられない!」と思った。不謹慎だとは思いながらも、Facebookで地元の愛護団体の里親募集情報を見ると、そのキジトラ猫に瓜二つの子猫が掲載されていた。川端さんが大好きな黒のキジトラだった。

「『この子だ!』と直感し、猫が亡くなった翌朝に愛護団体に連絡を入れました。『実は昨日、飼い猫が亡くなったんです』と愛護団体の代表に言いました」

代表は、昨日亡くなったばかりと聞いて「はぁ…」と少し戸惑ったようだった。すぐにでも猫が飼える環境であることを伝え、お見合いをすることになった。

その子猫は地元の大学の敷地内で野良猫として過酷な生活を送っていたそうだ。誰かに保護された後、保護主とは違う人の家に行き、その後、動物病院が保護。最後は愛護団体のボランティアのもとにやってきた。生活の場が転々と変わったせいかとても怖がりで、抱っこができるまで人なれさせる必要があったので、里親募集が遅くなったという。

お見合いをしてみると、ボランティア宅でたっぷり愛情を注がれたので、川端さんに会っても全くビクビクすることもなく、膝の上に乗せても嫌がらなかった。「この調子なら大丈夫かな」と思った川端さんは、子猫を迎えることにした。

ビビりのキジッチくん

2016年9月18日、愛護団体のボランティアが猫を届けに来てくれた。家の中で放してみると、「また違う場所だ」と思ったのか、警戒して狭い場所から出てこなくなった。ごはんとトイレの時だけ出てきて、また定位置の隠れ場所に戻っていく日がしばらく続いた。

「心配はしましたが、焦らずこの子のペースに合わせようと思いました」

キジトラのキジ。18歳で亡くなったキジトラの名前がカッチだったので「ッチ」を残したくて、キジッチという名前にした。

うつ病から救ってくれた恩猫

キジッチくんは、ビビリの甘えん坊。家族以外の人が家に来ると、隠れて出て来なくなる。しかし、とても男らしく頼もしい一面もあり、下の子(2匹目)の面倒をよくみてくれる。ちゅ~るをこよなく愛していて、何かを食べている時に口からぽろっとこぼすこともあるのが微笑ましい。

川端さんは、キジッチくんを迎える少し前までうつ病を患っていた。ところが、18歳の亡き猫の看病をするようになってから、どんどん体調が良くなっていくのが分かったという。「猫の生命力の素晴らしさ、生きようとする力に励まされ、命を救われました。そんな中キジッチと出会い、キジッチの天真爛漫で無垢な性格に励まされ、キジッチは亡き猫からの贈り物だと思いました。とても大事な存在になっています」

猫のいる暮らしは、コロナ禍でも幸せな気分をくれた。川端さんは猫のことを「常に何かを学ばせてくれる存在」だと思っているという。

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