和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と称された酒類販売会社元社長、野崎幸助さん=当時(77)=が2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、和歌山地検は19日、元妻の須藤早貴容疑者(25)を殺人罪と覚醒剤取締法違反罪で起訴した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこの日、事件の現場となった田辺市の野崎さん宅周辺を取材し、当サイトに対して「覚醒剤購入における紹介者の存在」「殺害方法」を今後の裁判のポイントの一つになると指摘した。
須藤被告は県警の捜査に対して黙秘を続けていると報じられ、直接的な証拠は明らかになっていないが、(1)野崎さんが覚醒剤を摂取させられたとみられる時間帯に自宅内にいた人物は須藤被告のみで、第三者が侵入した痕跡はないこと、(2)事件前に同被告は覚醒剤についてスマートフォンで検索し、密売人と接触していた…といった状況証拠の積み重ねによって、和歌山地検は立証が可能と判断して起訴に踏み切ったとみられる。
小川氏は今回の起訴を受け、「警察は昨年も(田辺市の自宅で)家宅捜索をして食器類などを押収して行ったり、須藤被告も田辺署での事情聴取を複数回受けています。また、同被告は東京方面で約半年に1回ほどのペースで引っ越していたのですが、引っ越す度に家宅捜索を5回くらい繰り返していたということです」と振り返った。
ただ、決定的な証拠は明かされていない。小川氏は「逮捕当日以来、警察は会見していない。本当に状況証拠の積み重ねだけなのか、何か具体的な証拠があるのかはまだ分かっていない」と現状を説明した。
須藤被告の背後関係について、小川氏は「被告は過去に覚醒剤の前歴も、使用歴もない。そういった者がSNSを通じて簡単に覚醒剤を入手できるかと考えると、なかなか難しい。仮に入手できたとしても、通常、1~3回分くらいです。それが致死量として100~200回分の量を飲ませているということで、これまで関りのない売人からそれだけの量を買えるのか、逆に売人が売るのかという疑問が残る」と見解を述べた。
その上で、小川氏は「(覚醒剤の大量購入は)誰かの紹介などがなければ難しいのではないか。警察の話によると、犯行前日に田辺市内で密売人と接触したということだが、そういう所に全然知らない人が(大量の覚醒剤を)持って来るのかと思われる。ですから、直接かかわっていなくても、(第三者に)紹介されたりということはあるのではないか」と指摘した。
今後は法廷での証言が注目される。小川氏は「気になるのは殺害方法です。どのように覚醒剤を飲ませたのかが、まだ具体的には明らかになっていないので、そこも今後の裁判のポイントの一つになる」と付け加えた。