開放感たっぷり、心地よい風と大自然を体感 中山間地域の観光で注目が高まる「屋根なし2階建てバス」

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東京や京都などの名所を巡回する観光バスとして活躍している、屋根無し2階建てバス。コロナ渦で観光ニーズも変わり自然を楽しみたいという要望の高まりから、都市部での主要な観光地のみならず、新しい生活様式での中山間地域の観光バスとして注目が高まっています。

屋根無し2階建てバス(オープントップバス)は、その名の通り、バスの2階部分に屋根がありません。そのため三密を回避しながら、ある程度の団体でも楽しむことができます。

中央アルプスと南アルプスの2つの雄大な景色を臨むことができる長野県伊那市。観光課は5月13日に、地元のメディア、漫画家、クリエイター、地域おこし協力隊、市長ら合計約20人を招いて、屋根無し2階建てバスを使った観光のアイディア出しを兼ねた試乗会を行いました。同課は、このオープントップバスを使って、全国的にも有名な高遠城址公園の花見ツアーや権兵衛峠などの絶景を楽しむツアーなどを企画したいと考えています。

新型コロナウイルスの感染拡大で、人と集まったり、笑ったり、声を出して感激することが、大きく減りました。そのような中、出発地の市役所の駐車場にバスが入って来たり、乗車したり、出発したりするたびに、乗員たちは満面の笑みを浮かべて、わくわくどきどきしていました。

伊那市の試乗会で使用されたオープントップバスは、赤色で約4メートルの高さがあります。大きなトラックよりも高く、いつも見る街も違う街に見えます。2階の屋根が無く、走り出すと心地よい風が気持ちよく入ってくる構造になっています。地域のにおいも楽しむことができます。

またこのバスを運行するジェイアールバス関東JRバスは、このオープントップバスは特に特別な車両だと言います。夜行バスをオープントップバスに改造した車両で、さらに広島東洋カープがセントラルリーグで優勝した際に、2016年と2017年に優勝パレードで選手が乗った記念のパスだからです。

オープントップバスが通って嬉しいのは、乗車した大人だけではありませんでした。バスのルートにある保育園の子どもたちは、初めて見る屋根の無い赤い大きな2階建てバスを見て、一生懸命手を振っていました。

乗員たちは試乗を体験して感じるままに「山と自然のガイドが入るといいね」「地酒を楽しめるともっと楽しいかもしれない」「民謡を聞くのもいいね」「自転車を乗せられると、いろいろな所へ行けて楽しそう」などとアイディア出しを楽しんでいました。

2020年7月末に公益財団法人日本交通公社が行った旅行意識調査によると、自然を楽しむ自然観光が温泉旅行やグルメ旅行よりも多く、公衆衛生の徹底、三密の回避が地域選択で重要となっています。そのため自然を楽しみたいという人のために、三密を回避した移動手段を用いながら自然を楽しむ動きは、伊那市のみならず他地域でも出てきています。

諏訪湖の周遊、那須塩原の紅葉ツアー、海を感じながら南房総を満喫する早春の潮風を感じるオープントップバスの旅、星野リゾート奥入瀬渓流ホテルは宿泊者を対象に渓流オープントップバス体験を提供するなど、新型コロナウイルスが流行り始めた2020年からオープントップバスを使ったツアーを展開しています。

このように全国で都市部に限らず、中山間地などでオープントップバスを用いた自然観光が広まりつつあります。

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◆楠田悦子(くすだ・えつこ)心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化と環境について、分野横断的、多層的に国内外を比較しながら考える。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」初代編集長を経て、2013年に独立。自治体や国の有識者会議委員などもつとめる。

▽ホームページ
https://www.leben-kurashi.com/philosophy-1

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