1人でキャンプを楽しむ「ソロキャンプ」が女性の間でひそかな人気を呼んでいる。「インスタ映え」するようにテントをかわいらしく飾り付けたり、本格的なアウトドア料理に凝ったりと、自然の中で思い思いの時間を満喫する人が多いようだ。新たな需要を見込み、女性向けサービスを充実させるキャンプ場も出てきた。
9月中旬、京都府南丹市日吉町の道の駅「スプリングスひよし」のキャンプ場。ユーチューバー「める」として活動する京都府在住の20代女性が1人で日帰りキャンプを楽しんでいた。スマートフォンや小型カメラで自身を撮影しながら、雨や日差しを防ぐタープを四苦八苦して設営していく。おのでまきを割り、火打ち石で起こしたたき火でウインナーや地場産野菜を焼いて味わう。「自分のペースで気楽に楽しめるのが醍醐味(だいごみ)ですね」と満面の笑みを浮かべた。
もともとインドア派だったというが「自然を感じたい」と6月にソロキャンプを始めた。アウトドア初心者ながら、月に1度、京都府笠置町や南丹市などのキャンプ場を巡り、テント設営や調理の様子を動画配信している。作業が落ち着けば、いすに座って「何も考えずにボーッと過ごす」。川のせせらぎや鳥のさえずりに耳を傾けるのが至福の時間だと、めるさんは語った。
日本オートキャンプ協会(東京都)によると、ここ数年、単身でキャンプ場を訪れる女性客が増えているという。男性の趣味というイメージが強かったが、堺広明事務局長は「グランピング(手軽で豪華なキャンプ)が注目を集め、アウトドアに対する女性のイメージを変えた」と分析する。
さらに女子高校生がキャンプを楽しむアニメ「ゆるキャン△」(18年)や女性ユーチューバーのソロキャンプ動画が人気を後押し。堺事務局長によると、最近では女性客を呼び込もうと、女性専用サイトやパウダールームを備えたキャンプ場もあるという。アウトドアメーカーも、女性向けデザインの商品の開発に力を入れつつある。
写真共有アプリ「インスタグラム」にキャンプの様子を投稿する人が多く、三角形のテントやカラフルなランタン、木製テーブルに並んだ彩り豊かな料理といった写真があふれる。10年前からソロキャンプを続けるキャンプコーディネーターこいしゆうかさんは「自分好みのおしゃれな道具に囲まれて自然の中で過ごすことに憧れる女性は多い。料理にこだわるなど、楽しみ方は多彩です」と評する。
ソロキャンプ用品の専門店「NOASOBIYA」(京都府城陽市寺田)には、昨年ごろから女性客が増えた。自身もキャンプ好きのスタッフ小島恵里香さん(36)は「既製品をアレンジしたり、キャンプ用品を手作りしたりする人がいる。『かわいい』を目指すだけでなく、バイクに乗ってキャンプするかっこいい女性もいる」と教えてくれた。
一方、女性1人のテント泊となると防犯面が気になるところ。こいしさんは、管理人が常駐して家族連れの利用も多いキャンプ場なら安心感は高まる、と助言する。「無理して1人で始める必要はない。友人同士で楽しんだり、コテージで宿泊したりと、不安を少しずつ解消しながらソロキャンプに親しんでほしい」とアドバイスする。