新型コロナウイルスによる3度目の緊急事態宣言の発令に伴い、京都府では初めて、飲食店にアルコール飲料の全面的な提供自粛が要請されている。そんな中、大手酒造会社や酒類提供を取りやめた飲食店が着目しているのが、ノンアルコール飲料だ。ノンアルメニューを増やしたり、ノンアル飲料の増産体制に入ったりしている。
豊富な串揚げをそろえた和食チェーンを運営する串八(京都市北区)は、緊急事態宣言の期間限定で、ノンアル飲料を従来の2倍の8種類に増やした。
これまでは、ノンアルコールビール1種とカクテルテイスト飲料だけだったが、新たにノンアルコールのハイボールや、人気のレモンサワーテイスト飲料を加えた。
3度目の宣言発令後は「業況が非常に厳しい」という。感染対策を徹底し、店舗営業を継続しているのは「従業員の雇用を守るため」だという。「そんな中でも来てくれるお客様に、お酒と同じように選ぶ楽しみを感じてもらえれば」と、ノンアルメニューを充実させた狙いを話す。
大手ビール会社も、ノンアル需要の高まりを捉え、増産体制に乗り出した。
キリンビールによると、緊急事態宣言の発令後、アルコールを提供できなくなった結婚式場などから、ノンアルコールビールの注文が増えているという。キリンビールは、関西向け商品を作る主力拠点の滋賀工場(滋賀県多賀町)などで、ノンアル飲料を増産する方針だ。
ただ、地域密着型の酒販業者は、ノンアル需要の恩恵には預かっていない。京都府内のある酒販業者の役員は、「4月下旬以降、全体の売り上げは例年の3割程度」と嘆く。ノンアル飲料の売り上げは「確かに増えているが、数%程度」といい、全体の収益減を補うような状況ではないという。