感染収束の切り札のひとつであるワクチンについて考えてみた<後編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

「誰ひとり、取り残さない」

 日本で高齢者のワクチン接種が始まったものの、「予約の電話がつながらない」「慣れないネット予約はできない」という声が多くあります。

 こうしたことは、生命の問題の前に、大したことではないように思われるかもしれませんが、私はここに、政治や行政の重大な姿勢が問われているように思います。

 新型コロナ以前からですが、国を挙げて、デジタル化・ICT化が推進されています(この点でも、日本は世界の中で、遅れてしまっているわけですが、それについては、また別の機会に)。しかしながら、必ずしもすべての方が、先端技術を使いこなせるわけではありません。こうした「デジタル格差」問題を解決するに当たっては、「誰も取り残さない」ことが大切と考えます。もちろん「インターネットは非常に便利」であり、推奨することにより利用する方が増えることはよいことで、引き続きサポートは行われていくべきだと思いますが、強制するのは適切ではないと思います。

 電話のほかに、自治体に対応する窓口を設ける、民間に委託する等も含めサポート体制を作るといったことも必要だと思います。そういったことを「無駄」と切り捨ててしまうのではなく、技術や時代の変わり目において、「行政が担うべき必要なコスト」と考えるべきだと思います。

 イスラエルでも、ネットを使わない人は、予約センターに電話してIDナンバーを伝えると、オペレーターが代わりに予約してくれるシステムを取っています。スタート最初は、ネット予約システムも電話予約センターも混乱して、なかなかつながらなかったという状況だったそうです。

 何事も、すべてが、一挙に円滑には進みません。国民に寄り添いながら、できることを最大限やっていく、ということだと思います。

 ワクチン接種も、入院や治療を待って苦しんでおられる方も、どうか「誰ひとり、取り残さない」――平時でも、危機下でも、守られるべき大切な方針だと思います。

(参考)
世界のワクチン接種状況(総数での比較)
世界のワクチン接種状況(一度でもワクチン接種した人の各国民に占める割合)
COVAX(WHO)
国内のワクチン接種状況(官邸)
国内のワクチン接種状況(厚生労働省)

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