「まんぼうの影響がひどいです」「経済が動かないと出荷された野菜は捨てるしか無いです」。新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない中、京都市内で90年以上続く八百屋が窮状を訴えている。まん延防止等重点措置や緊急事態宣言に伴い、飲食店に休業や短縮営業が要請されていることから、野菜の流通が滞り、廃棄せざるを得ない商品もあるという。現状を知ってほしいとツイッター上で発信を続ける八百屋に話を聞いた。
つやつやとしたトマトや握りこぶしより大きいレモン。4月下旬、京都中央卸売市場付属売店「西喜商店」(京都市下京区)の店先には、野菜や果物がところ狭しと並び、老若男女が次々に買い求めていた。
「『まん防』が出たタイミングで市場の野菜がだぶつき始めました」。4代目の近藤貴馬さん(36)は厳しい表情でそう振り返る。
4月12日、京都府にまん延防止等重点措置が適用されると、京都市内の飲食店などに営業時間の短縮が要請された。その結果、飲食店による生鮮食品の発注が激減した。4月25日には3度目となる緊急事態宣言が発令され、西喜商店も取引先の飲食店からの発注が減った。
「野菜は2、3カ月先を見込んで作付けして出荷するので『来週から飲食店は時短営業で』と言われても対応できない。うちのような末端の八百屋に余った野菜が来やすくなるんです」と近藤さんは嘆く。
店の脇に積んだ段ボールにカリフラワーが32個入っていた。別の段ボールには京都ならではの野菜「京ラフラン」も。どちらもこの日、仲卸業者から「さばいてほしい」と頼まれたものだという。
新型コロナ禍以前から市場で余った野菜はなるべく引き取り、ツイッター上で紹介してきた。売れ残った野菜を流通に乗せたいという思いからで、投稿を見て購入する常連客や飲食店関係者もいるという。
しかし、野菜は傷みやすいので在庫を大量に持つことはできない。「なるべく売り切るようにしていますが、さばききれないと捨てるしかない。食べられる野菜なので、めっちゃもったいないです」と近藤さんは苦悩を語る。
4月20日、近藤さんはツイッター上に悲痛な思いをつづった。「僕ら八百屋は協力金とかはもらえない。そういうのはもういいんです。それより野菜が動か無さすぎて捨てるのが嫌なんです」
率直な言葉は反響を呼び、購入を希望する人が「何か協力させてください」などと全国からメッセージを寄せた。
「愚痴みたいな気持ちで投稿したので…」。近藤さんはツイートが想像以上に注目を集めたことに驚きつつ「八百屋の状況を知ってもらえてうれしい。こうした現象は全国の八百屋で起こっているはずなので、近所の八百屋さんでぜひ野菜を買ってもらえたらなと思います」と言葉に力を込めた。