近所の大きな公園を散歩していると、開花時期を迎えたツツジの花が咲き乱れていました。子どもたち数人がラッパ形の花を摘み、根元をチューチュー吸っては「あまーい」と歓声を上げています。すると、遠くにいたお母さんたちが大声で注意しました。「ツツジは毒あるから吸ったらあかーん!」。
専門家「吸わない方がいいです」
ツツジ・シャクナゲ研究者として知られる、新潟県立植物園(新潟市秋葉区)の園長、倉重祐二さんに電話で話を聞きました。
ーーツツジの蜜を吸う子どもたちが「ツツジには毒がある」と注意されていました。
「レンゲツツジの仲間は葉、花、蜜に毒があります。一般的に公園に咲くツツジとは種類が違います」
ーーレンゲツツジと、毒のないツツジの見分け方は?
「区別は難しいです。レンゲツツジには園芸用の品種もあり、(公園や住宅の庭など身近な場所に)植えていないとも限らないため注意が必要です。混じって咲いていることもあるので、ツツジの蜜は吸わない方がいいです」
実際に2015(平成27)年5月、新潟県内で庭木のレンゲツツジを食べたことによる食中毒が発生しました。県では「観賞用の植物は決して食べることがないように注意しましょう」と呼び掛けています。
ーー公園に咲くツツジも含めて、ツツジの蜜は吸わない方がいいんですね。
「リスクがないわけではないので、ツツジの蜜は吸わない方がいいです」
レンゲツツジの中毒症状とは
厚生労働省のサイト内「自然毒のリスクプロファイル」によると、「ツツジ科の植物には毒をもつものが多く、蜜にも毒性成分があることがあり、注意が必要」とあり、中毒症状としては、嘔吐、下痢、けいれんが挙げられています。
「特にレンゲツツジは、グラヤノトキシン類を含み、欧米では花の蜜を吸った児童や馬、羊などの家畜の中毒が報告されている」(厚生労働省 自然毒のリスクプロファイルより引用)
グラヤノトキシンとは、レンゲツツジやアセビ、ネジキ等のツツジ科の植物に含まれる植物毒のこと。海外では、トルコの黒海沿岸やネパールの高山地帯で採取されたハチミツによる中毒が報告されているそうです。数時間でめまいや嘔吐、中には重篤な中毒症状を起こす場合もあるといいます。
東京都福祉保健局や各自治体のホームページなどでも、レンゲツツジは「間違いやすい有毒植物」と位置付け、注意喚起しています。
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専門家でない限り、毒性のあるツツジと無毒のツツジは見分けが難しいということが分かりました。結論は「ツツジの蜜は吸わない方がいい」。冒頭で「ツツジは毒あるから吸ったらあかーん!」と叫んでいたお母さんたちは正解でした。
野草や山菜狩りなどでも注意される「採らない!食べない!売らない!人にあげない!」を頭に置いて、ツツジの花は愛でるだけにしておきたいですね。