「大人になって陰キャであることに引け目が無くなった」―話題の投稿について“陰キャたち”の本音を聞いた

中将 タカノリ 中将 タカノリ

「自分のことをコミュ障と思っていたが、コミュ力を売りにしている体育会系やマスコミ系のノリが苦手なだけだった。陰キャのノリでいいならコミュニケーションできる」

「スクールカースト上位者が実社会でも上位にいるとは限らないし、上位じゃない人間のほうが圧倒的多数なんだと気づいて楽になった」

大人になって陰キャであることへの引け目が無くなったというシナリオ制作会社「株式会社レプトン」代表の真弓創 (@nofun1978)さんの投稿がSNS上で大きな注目を集めている。

陽キャのオラオラなノリの前にたじたじとなってしまいがちな陰キャだが、たしかにキャラの陰陽と社会的な成功、幸福度は別の話。真弓さんの投稿に対しSNSユーザー達からは

「私が未だに解せないのが、体育会系や陽キャの“うぇい”や“トゥース”だけで意思疎通出来ていて、そう言う人が社会でも上位でその情報量で世の中の重要な事が決まって行くのが不思議…あれって微妙に波長を変えて発音してるのか…」
「一定数そういったコミュニケーションお化けのような奴の中に能力までもお化けみたいなヤツがいる時は違う世界の人だと思い素直に尊敬するようにしています。また、そういう奴は陰キャにも優しかったりするんですよね。」
「コミュニケーションスタイルに正解はないですよね!そして、自分のキャラを決めてしまえばコミュニケーションは意外とラクにとれますよね。とても素晴らしい発想だと思います!」

など数々のコメントが寄せられている。

果たして陰キャの人々は社会や自己をどのように見つめているのだろうか?真弓さんの投稿を踏まえ、陰キャを自認する2人の方にお話をうかがってみた。

   ◇   ◇

まずはタレント・ミュージシャンの野中比喩さん。

中将タカノリ(以下「中将」):野中さんの陰キャぶりがよくわかる自己紹介をお願いいたします。

野中:小学校の時は弟の同級生しか友達がおらず、中学でもなじめずゲーセン通い、高校では美術科にもかかわらず価値観がズレてると精神異常者扱いされ、それを真面目に受け止め精神科を受診しました。また同じ頃、登校時に痴漢に遭ってうつ病になり、不登校になってしまいました。大学では“大学デビュー”的に張りきってオタクを集めて物作りサークルを作りましたが、部員にスカートの中を盗撮されるなどろくなことがありませんでした。

中将:ご苦労されましたね…。学生時代、コミュ力の高いスクールカースト上位者に対してどのような感情を持っていましたか?

野中:別の世界の人間のように感じてました。向こうがこちらを理解できないように、こちらも向こうが理解できると思ってなかったです。たまたまカースト上位の人とネット経由でバンド組もうと話が上がったことがあったのですが、「パンクやロックのボーカルは脱いだほうが面白い」と言われて気持ち悪さを感じました。憧れはまったくなかったです。

中将:スクールカースト上位者に対し引け目はありましたか?

野中:義務教育の間は成績で比べてくる家庭環境だったので、そこだけは引け目、苦痛を感じていました。

中将:真弓創さんのツイートを読んだ感想をお聞かせください。

野中:スクールカーストにとらわれたことのある人がこんなにいるんだなと変に新鮮な気持ちになりました。

中将:現在、野中さんは世の中に対して「陰キャでもいい」という開き直りができていると思いますか?

野中:「陰キャで問題ありますか?」と思っています。友達は趣味や話が合う人、価値観が合う人とだけでいいと思います。陽キャには、陰キャに対して差別意識がある人もいますから。今は陰キャでも知識やスキルがあれば社会的に活躍できる時代です。学生で悩んでいる人には、ぜひに早くから興味のあることを学んで将来につなげてほしいです。ただ、個人的な経験から特殊メイクアーティストのお仕事はオススメしません。SNSでもグロ画像の規制が厳しくなってきていて発信もままなりません(泣)。

▽「野中比喩(のなか ひゆ)」プロフィール

体が弱くゲームしか友達がいなかった幼少時代を経て2003年にアート活動を、2005年には「野中ひゆ」として地下アイドル活動を始める。サブカル化草創期の大阪・日本橋を拠点としたことから“オタク系”、“ポンバシ系”として注目を集めた。2015年のアイドル卒業宣言以降は名義を「野中比喩」に変更。 特殊メイクアーティストとしても活動しており、これまで石原貴洋監督映画「バイオレンスPM」(2010年)、「大阪闇金」(2021)年、ハリウッド映画「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」公開記念イベント(2017年)等、数々の作品、イベントに参加している。過去の出演番組に「アウト×デラックス」(フジテレビ)、「​田村淳の地上波ではダメ!絶対!」(スカパー!)等。趣味はコスプレ。

■Twitterアカウント https://twitter.com/hiyu_nonaka?s=09

   ◇   ◇

続いて、まいどなニュースで特約記者を勤める青島ほなみさんにもお話をうかがってみた。

中将:青島さんの陰キャぶりがよくわかる自己紹介をお願いいたします。

青島:とにかく話しかけることが苦手で、高校の3年間友だちが1人もできませんでした。「頑張って人と話すくらいなら独りでいいや…」と諦めてしまうところがあります。「どうやったら皆と仲良く話せるか?」と頭の中で何度もシュミレーションしているんですが、実行に移せたことは今のところないです。陽キャグループと遊びに行った時にノリについていけず、疲れて寝込んでしまい自分が陰キャだと気付きました。

中将:学生時代、コミュ力の高いスクールカースト上位者に対してどのような感情を持っていましたか?

青島:もはや人種が違うと思っていました(笑)。楽しいと感じる、感情のスイッチが違うというか…。話しかけてくれても、「気を使わせるんじゃないか」と余計なことを考えてしまい、打ち解けられませんでした。

中将:当時、スクールカースト上位者に対し引け目はありましたか?

青島:上位スクールカーストの人は積極的な分、クラスの主導権を持っていたので、引け目は感じていました。でも、悔しいというより「私もあの輪に入りたい」と憧れの気持ちが大きかったです。

中将:現在、青島さんは世の中に対して「陰キャでもいい」という開き直りができていると思いますか?

青島:私の肌感覚ですが、陰キャの方はそれを自認して「わたし陰キャだから…」と開き直っているパターンが多いのではないでしょうか?誰かを侮辱するためではなく、自己表現のワードとして使われているイメージが強いです。「陰キャ」であることで、共感を生み出したり好感を持たれることもあると思います。そのような発信をしている人が本物の陰キャであるかどうかは別として、ある意味「陰キャ同士のノリ」が認められやすい世の中になっているように感じます。私は、自分が陰キャであることに誇りを持っていたいです(笑)。

▽「青島ほなみ(あおしま ほなみ)」プロフィール

ライター、イベンター。2002年1月24日生まれ。兵庫県川西市出身。2014年から舞台女優として活動するも2018年に引退。2019年、セカンドキャリアに挑戦し、弱冠18歳でライター活動をスタート。芸能、トレンド、社会問題についてするどい目線で情報発信している。現在、大阪音楽大学で音楽業界のプロデュース、マネジメントについて勉強中。また実業家として関西アイドルに特化したメディア「MAITSU」やアイドルイベント「Persons!」を主宰している。趣味は小演劇やインディーズ映画鑑賞。

■Twitterアカウント:https://twitter.com/aoshimahonami?s=09

   ◇   ◇

インターネットの発達の結果か、資本主義経済が飽和状態になった結果か、強引に物事を推し進める力より、多方面に対する繊細な配慮のほうが重視されている現代社会。その中にあって今こそ陰キャが輝く時代が来ているのかもしれない。

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