大阪市のホテル「1泊390円」プラン再開 3度目緊急事態宣言で決断 赤字でも「サンキュー」の言葉を聞かせてくれたら

杉田 康人 杉田 康人

JR、南海電鉄新今宮駅前のビジネスホテル「ホテルサンプラザ」(大阪市西成区)が、通常1泊2000円の宿泊料金が390円になる「サンキュープラン」を22日から再び始めた。大阪府などに3度目の緊急事態宣言が発出されるのを機に、赤字覚悟…いや、赤字確定の宿泊プラン再開を決断した。

コロナ禍で話題になった、ネットカフェや銭湯よりも安いビジネスホテル1泊。電話予約をした上で、同ホテルのツイッター(@hotel_sunplaza)をフォローし「1泊390円サンキュープラン」のツイートをリツイートし、フロントで画面を提示するだけでOK。今回は近隣の系列ホテルの「サンプラザ2」「ジパング」(ともに大阪市西成区)で利用できる。

ホテルを運営する株式会社JUNONホテル事業部の角谷正樹さんは「コロナで本当に困っている方はたくさんいらっしゃる。緊急事態宣言が出ても、生活があるので動かないわけにはいかない。仕事探しの拠点などに使っていただきたい。1泊390円なので、いつか『サンキュー』という言葉を聞かせていただけたら」と話した。

同ホテルでは、2度目の緊急事態宣言が大阪府に発出中の1月18日から3月末まで1泊390円のプランを実施。約1500人が宿泊した。約2割が、コロナの影響などで職を失った人の利用だったという。

角谷さんは「本当に困っている人がいるんだなと思いました。40代男性が多かったが、派遣切りに遭って親元にも帰れないという20代男性もいた」と話す。繁華街のミナミが近いからか、女性の利用客も少なからずいたといい「水商売をしている人が多いので、仕事が止まっているのかなあ…」と思いをめぐらせる。

ホテルには、多くの意見が寄せられた。ほとんどが「がんばれ」という声。大阪府内のある企業からは、雇用枠の提示があった。政治家がお忍びで泊まりにきたといい「通常料金で何泊か泊まっていただきました。応援したいので、通常料金で泊まらせてほしいという声が多かったです」と振り返った。

390円プランが活況になるほど、ホテルの赤字はかさむ。社内でも反対意見が多かったが、社長がGOサインを出した。ボランティアの女性が宿泊し「こんなことは、なかなかできることじゃない。1泊390円でも普通の接客で、他のお客様と同じように扱ってくれた。自分の目指す道の指針になりました」との手紙を残した。「やってよかった」と、角谷さんはさらに背中を押された。

ゴールデンウイークを前にした3度目の緊急事態宣言。宿泊予約のキャンセルが相次いでいるという。「就職活動や家を失った人の拠点や避難場所として使ってほしい。少しでも安く、そして少しでも速く、次の仕事や家を見つけていただきたい。一緒に乗り切っていきましょう」と呼びかけた。

最後に、角谷さんに聞いてみた。

――ところで、1泊390円は初回1泊きりなんですよね?黙って何度も利用される方も出てきたと思いますが、確認はされますか?

角谷:しないです。そのようなお客様もいるんだろうなと思いましたが、そんなにいなかったです。世の中、捨てたものじゃないなと。仕事見つかりましたというお電話やお手紙をいただきました。それが本当に、うれしかったです。

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