「医療現場は地獄の戦場だった!」の著者が、ワクチン接種が始まった日本人へ緊急提言

山本 智行 山本 智行

 国内での新型コロナウイルスワクチンの医療従事者向けの先行接種がスタートした。今後は安全性を確認しつつ、高齢者や基礎疾患のある人を優先して順次接種していく。では、ひと足先にワクチン接種が始まったアメリカの事情はどうなのか。「医療現場は地獄の戦場だった!」(ビジネス社)の著者でボストン在住の医師、大内啓氏が日本時間18日早朝、オンラインで緊急提言した。

 アメリカでは2020年12月11日にコロナワクチンの使用許可が出されると即時にワクチン接種が始まった。大内氏が勤務する米東部マサチューセッツ州ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院は15あるハーバード・メディカル・スクール系列の医療機関のひとつ。ここでも接種が直ちにスタートするはずだったのだが…。

コロナにはがっかりすることばかり

――遅ればせながら日本でもワクチンの先行接種が始まりました。アメリカの医療現場での接種はスムーズに進んでいったのでしょうか?

「情報は国から州へと伝わるわけですが、ルールがコロコロ変わっています。いまは一般の人への接種も始まっていますが最近でいうと、これまでは病院で接種していたのに突然クリニックや日本でいうマツモトキヨシのようなところでの接種に変更になった。初めてのことだから仕方ないのでしょうがエッと、思うことばかりです」

――大内さん自身はすでにワクチンを打たれたんですよね。

「昨年のクリスマス前と1月末の2回、打ちましたが、そこに至るまで紆余曲折がありました。ホント、コロナではがっかりすることばかりです。病院によってやり方は違うと思いますが、私の勤務する病院では医療者の中でも一番患者さんに近い人を優先し、あまり患者さんをみない人、病院で働いているけれど、患者さんとコンタクトを取らない人という順番で接種することになりました」

なんで救急救命医より受け付けの方が先なんだ

「ただ、系列の病院に勤務する人は7万8000人います。患者さんと一番近い位置で仕事をしている人もたくさんいて、うちの病院ではアプリを使って予約を取るシステムを採用したんですが、案の定、これが1日目に予約が殺到してパンク。結局、1週間ぐらい予約が取れない状態が続きました。みんなどうなっているんだ、とメールが飛び交い、騒然となっている中、運良く予約が取れた人は受け付けの人だったりして。何でこの人が救命医の私より先なんだ、と嘆きたくなりました」

――待たされていた期間の心境は?

「例えば内科病棟にいる患者はコロナを持っている、持っていないが分かっていますが、救急医が接する患者は分かっていません。いまでもテストで分かるのは早くて1時間半後。通常で検査結果が出るまでに6時間かかります。そんな状態で1年近く勤務していたわけだから広い目で見れば、1週間待たされてもたいしたことないと思う反面、この1週間の間に大きな病気に罹ったら悔やまれるし、そんな自分に心が狭いな、と思ったりすることもありました」

ワクチン接種は「人体実験でしょう?」と言う人も

――現時点で、勤務する病院の医療従事者への接種はどの程度進んでいますか?

「コロナは2回接種するわけですが、現時点で1回目を終えている人が7万3000人。2回目を打ち終えている人は3万人です。黒人やヒスパニックの人の中には医療を信じていない人もいて人体実験でしょ、と思っている人もいる」

――大内さんが接種したときの手順や状況を詳しく教えてください。

「いつになるのかと思っていたところ、きょう予約していた人が来なくて余っているから打つか、となり、利き腕ではない方の左腕に打ってもらいました。受けたのはファイザー製。注射した部位に2日ほど痛みが続き、この点は毎年接種しているインフルエンザワクチンとは違いましたね。打つ前には説明があり、既往症なども聞かれました。接種した後は別室でソーシャルディスタンスに配慮したイスに座り、35分間のタイマーが作動。副反応はなく、そのまま退出しました。

 ワクチン接種で使用するのは筋肉注射です。日本人は筋肉注射に慣れていない人が多いようですが、そこは従ってもらうしかありませんね」

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