パルナスの流れくむ尼崎の「モンパルナス」が閉店…コロナ禍で家賃払えない「モスクワの味」守るため移転を決意

杉田 康人 杉田 康人

印象深いテレビCMが記憶に残る洋菓子チェーン「パルナス」(2000年営業終了)の流れをくむ兵庫県尼崎市の喫茶店「モンパルナス」が、3月31日で閉店。5月1日に、大阪府豊中市の阪急宝塚線庄内駅近くに移転することになった。

モンパルナスは1974年(昭和49)、パルナス創業者の故古角(こかど)松男さんの弟・伍一さんが阪神尼崎駅構内に開業。現在は伍一さんの長男、古角武司さん(61)が運営会社「パルナス商事」の社長を務めている。

最盛期200店以上のチェーン店を数えたパルナスの“モスクワの味”を受け継ぐピロシキが名物で、ネット通販やデパートの催事などでも人気を博している。3月下旬に閉店と移転を告知。尼崎に根を下ろして48年目の別れに、尼崎市民や常連客から「残念」「悲しい」との声が続々と寄せられている。

社長の古角武司さんは「閉店は恥ずかしいことだと思っていた。セールとかをやらず、静かに閉めたかった」と話したが、ネットなどで閉店を知った客からの注文が殺到。最大1日1500個の生産が追いつかないほどだという。

2020年からのコロナ禍で、店舗の客足が激減。同年4月からの緊急事態宣言下ではホームページなどで「存続も危うい状況」と訴えた。爆発的に注文が増えたが、コロナが第2波、第3波…となるたびに「爆発的な注文が何回も続くわけではなかった」と話す。65席ある喫茶店に、客足は戻らなかった。

武司社長は「尼崎に未練はあるし、やりたかったんですが…。このままでは家賃が払えないどころか、会社が潰れてしまいかねない状況」と移転を決断。尼崎に似た大阪の下町・庄内で再出発する。喫茶コーナーは20席ほどに減らし、ピロシキなどのベーカリー部門に注力するという。

関西出身の40代以上には、日曜朝の悲しげなメロディーのCMとともに思い入れが強いパルナス。武司社長は「ここで絶やされない。こんなしんどいことやめようと思ってましたけど、踏みとどまってしまった。ピロシキのために生きているような感じ」と語気を強める。令和に残るパルナスの名と、秘伝のピロシキを守るための移転だと強調した。

移転先の庄内駅近くには以前、パルナスのチェーン店と工場があり、地元住民からは「パルナスが帰ってきた」との声が上がっている。この日も、幼い頃食べたピロシキの味を懐かしむ客から「まだあった!買えてよかった」と声をかけられていた武司社長。「庄内に一度移転しますけど、安定したらいつか尼崎に帰ってきたい」と思いをつのらせた。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース