女性のパンツスーツは葬儀ではマナー違反なのか? 「大切なのは気持ち」…葬儀社に聞いた

中将 タカノリ 中将 タカノリ

「マナー違反してもいいよね?」

「女性のパンツスーツの喪服は正式な場ではマナー違反」という通販サイトやマナーサイトの記述を見て喪服の購入意欲をそがれてしまったという女性の投稿がSNS上で大きな注目を集めている。この投稿の主は法律に関する数々の漫画作品で知られる弁護士兼漫画家の赤ネコさん(@Redips00)。

赤ネコさんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「具体的にどうマナー違反なのかが分からんですね…」
「葬儀の場でマナーがとか言う人がいたらまず切るべき人間関係なのでわかりやすくていいと思います。」
「普段着に黒の腕章や、黒いリボンでも良いのですよ。その方とあなたの関係は分かりませんが、悼む気持ちがあれば良いと思います。私なら、機能から考えた時、お寺で正座の場合、パンツは窮屈かな、と思います。」
「仕事で喪服の販売してますけどそんなマナーは勉強した覚えありません。強いて言うなら礼服にもTPOによって正礼装準礼装略礼装と種類はあるのでそのことかなと思いました!商品としてもパンツスタイルの喪服はどのブランドも出してますので安心してください!」
など数々のコメントが寄せられている。

赤ネコさんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):パンツスーツの喪服はダメというマナーをご覧になった経緯をお聞かせください。

赤ネコ:最近親族が亡くなったんですが、コロナの影響で正式な葬儀を後日あらためてすることになったんです。この機会にちゃんとした喪服を買おうと思って通販サイトで探したんですが、パンツスーツだとなかなか見つからず、あっても「正式な喪服でないことをご了承ください」とか書いてあってあったりするんですよ。気になってマナーサイトを調べると、そこにも同じようなことが書いてありました。

でも私はスカートをはく気はありませんし、単なる黒のパンツスーツなら手持ちがあるし、買う意味がないなと思ってちゃいました。

中将:このマナーをご覧になった時のご感想をあらためてお聞かせください

赤ネコ:「へぇ、そうなんだ」という程度ですね。そういうマナーがあると言うならそうなのかも知れないけど、私は気にしない方なので従う気は起こりませんでした。

中将:ご投稿に対して数々のご意見が寄せられていますが、反響についてのご感想をお聞かせください。

赤ネコ:軽い気持ちで投稿したのにこんなに大きな反響があって驚きました。そんなにみなさんの琴線に触れる要素があったのか…と。

   ◇   ◇

「赤ネコ」さん関連情報
▽Twitterアカウント
https://twitter.com/Redips00
▽ポートフォリオ
https://drive.google.com/file/d/1qHw5Re5TWpmI0xEeF4MK2FCYIX0vMp3p/view

   ◇   ◇

なぜ葬儀において女性のパンツスーツがマナー違反なのだろうか。果たしてそのマナーに正当性はあるのか?葬儀に精通するプロフェッショナルとして、西田葬儀社の蜷川さんにお話をうかがってみた。

中将:女性のパンツスーツは葬儀の場において本当にマナー違反と言えるのでしょうか?

蜷川:マナー違反とは言えないと思います。よってパンツスーツで安心して参列なさってください。女性の葬儀の服装は着物の喪服やアンサンブル、ワンピース等がありますが、そこにパンツスーツも含まれています。パンツスーツはカジュアルという意見もあるようですが、葬儀の場で大切なのは肌を過度に露出しないことです。その条件を満たしていてスーツとして畏まった服装であるパンツスーツは、問題があるとは言えません。むしろスカートかパンツスーツかよりも大切なのは色です。黒やダーク系統の色であるなら大丈夫です。

むしろなぜスカートが推奨されているのかを一度考えてみるといいかもしれません。もしスカートが推奨されている理由の一つに女性らしさがあるとしたら、それは本当に正しいでしょうか?昔の価値観で作られた文化を今の時代に照らして見たとき、これらの考えは時代と共に大きく変わっていくと思います。

中将:これはマナーではなく「女性は女性らしくあるべき」という旧弊な考えが生んだ同調圧力なのかもしれませんね。体感として葬儀に参列する女性で何割くらいの方がパンツスーツをお召しになっておられるでしょうか?

蜷川:参列者のだいたい1割ほどです。スカートでなければいけない決まりはないので、割合は今後も変わっていくと思います。ちなみに自社の女性スタッフはスカートとパンツスーツのどちらも配布されており、どちらを着ても良いことになっています。むしろ寒いときはパンツスーツが推奨されているくらいです。

中将:つい最近、「黒マスクでないと葬儀マナー違反だ」という珍マナーも話題になりましたが、葬儀は非日常な空間だけにマナー関連で悩まれる方は多いようです。葬儀に参加するにあたって本当に大切な心がけとはどんなことでしょうか?

蜷川:葬儀に参加するにあたって根本的な心がけは、葬儀はお悔やみの場であるということです。よって葬儀の服装はファッションとは違います。ファッションとは自分のため、自分自身を表現するために行うものです。しかし葬儀の服装で大切なのは、ご遺族の悲しみや辛いお気持ちに寄り添い、お悔やみを示すものであるということです。よって自分のために行うものではなく、ご遺族のためにするものです。だから葬儀の場では着飾ることはしません。アクセサリー等はつけず、アクセサリーで許されているのはパールのみです。(真珠は悲しみを表すため)

現代は価値観が移り変わりやすい時代ですが、厳粛な葬儀の場で身に着けてよいか迷う物は他にも出てくると思います。良いか悪いか判断に困ったときは、原点である「ご遺族へのお悔やみを示す」に還ってみてください。例えば金のブレスレットを身に着けてよいか悩んだのなら、悲しみの渦中であるご遺族がそれを見てどう思うか、そこに立ち返って考えてください。お悔やみを示せているでしょうか。その点で言うと、スカートだからお悔やみを示していて、パンツスーツだからお悔やみを示していないなんてことはないのです。だからパンツスーツで参列して頂いて構いません。

   ◇   ◇

「株式会社西田葬儀社」関連情報
所在地:愛知県名古屋市昭和区若柳町2-5
▽公式サイト
https://www.gosougi.co.jp
▽YOUTUBEチャンネル「お葬式ch」https://www.youtube.com/channel/UCWCqeppr8QCTEhxNBBxz-iA

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蜷川さんのおっしゃるように「ご遺族へのお悔やみを示す」という見地からは、女性のパンツスーツは葬儀においてなんらマナー違反にはならないだろう。葬儀に限らず、近年さまざまな珍マナーが提唱されているが、マナーとはいったい何のためにあるのかという根本に立ち返ればそのほとんどが取るに足らないものだ。このような風潮に心惑わされる人が少しでも少なくなることを願いたい。

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