「友達を突き飛ばした」「順番待てない」…発達障害やグレーゾーンのわが子の園トラブル!叱る以外の対処法3つ

西村 猛 西村 猛

 保育園や幼稚園での園生活で生じる、様々なお子さんの「困りごと」。私も仕事柄、よく相談を受けますが、特に多いのが「お友達とのトラブル」です。具体的には、「順番を待つことができずトラブルになる」「口喧嘩のときに、手が出てしまう」「いくら言って聞かせても理解していないように見える」などです。

 幼児期にはよくあることなので、必要以上に心配する必要はありませんが、お子さんに発達特性(発達障害やグレーゾーンの場合)がある場合は、適切にかつ丁寧に問題に対処することが大切です。今回は、グレーゾーンを含めた発達特性のあるお子さんの保育園や幼稚園でよく見られるトラブルに対応する際に注意しておくポイントと、対処方法についてご紹介します。

第1ステップ:「問題行動」の理由を考察し、叱らずに意識を変えさせる

▽(1)大切なのは、背景(理由)を知ること

 こうした困り事=「問題行動」が起こる時には、必ず何かの理由が隠れています。「ダメ」と叱る前に、「なぜその問題行動が起こったか」「どういった気持ちの表れなのか」について考えてみるようにしましょう。

 例えば、「友達を突き飛ばす」という行動の裏には、「言葉で『やめて』を上手く伝えることができないため、嫌な気持ちを表現する方法として、突き飛ばすという手段を間違って覚えてしまっている」ことがあります。その場合は、問題行動を叱ることよりも、「どうすれば自分の気持ちを上手く伝えられるかを一緒に考える」ことのほうが大切になります。

 まずはお子さんとの会話をしたり、行動を見守る中で理由を探っていくようにしましょう。

▽(2)「叱る」ではなく「別の表現手段を考えさせる」…「やっぱりダメな子」と思わせないために

 発達特性があるお子さんや、グレーゾーンと呼ばれるお子さんの中には、自己肯定感が低いお子さんが多くおられます。頭ごなしに、「ダメ」と叱られることで、「分かってもらえない」「やっぱり自分はダメな子なんだ」と今以上に自信を無くしてしまうリスクがあります。

 自己肯定感を下げることなく、問題解決に導くためには、「ダメ」と叱ることよりも、「自分の思いを伝えるための、別の手段を考えさせること」の方が大切になります。

 手順としては、

1.    今回の行動に至った気持ちを考えさせる。
2.   そのことが適切であったかどうかを考えさせる。
3.   他に手段がなかったかを考えさせる。思いつかない場合は「こういう方法は?」「こんな伝え方なら?」と例を提示し、それについて考えさせる。
4.   自分で「今度から、こうすればいいかも」と結論付けられるように、会話の中で導く。

といった方法を実践してみることをお勧めします。

 もちろんお子さんによって、言葉が理解できない、自分の気持ちを言葉で表現できないといった場合もありますので、お子さんに合った対応方法を考えてみてください。

 なお、すぐに叱ることが必要な場面が一つだけあります。それは、「火や刃物などの、危険なものを持ち出した時」です。こういった物を使おうとした時には、危険回避の意味からも、はっきりと「ダメ」であること伝えるようにしましょう。

第2ステップ:園の先生に知ってもらう…実は「子ども自身が、困っている」

 園の先生に、お子さんの具体的な課題や特性を伝えることも大事ですが、それ以上に先生に伝えるべきことは「大人から見て困った子は、本当は子ども自身が困っている場合が多い」ということです。子ども自身、困った場面にどう対応していい分からず、自分ができる方法でしか表現していないこともあるからです。

 大人が、「この子は困った子だ」と捉えてしまうと、「注意しなければ」「叱って言い聞かせなければ」と思ってしまいますが、「子ども自信も困っている」と捉えることできれば、「どういう風に困りごとを解決すればいいだろう」と前向きに考えることができるようになります。

第3ステップ:発達支援の専門家が園を訪問するサービスを利用してみる

 園生活の中で起こるお子さんの行動の課題は、保護者や園の先生方だけでは解決できないことも多くあります。その場合は、「発達支援の専門家(理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、心理士など)がお子さんの通う園に訪問し、園の先生をバックアップしながらてくれるお子さんにとって最適な環境と整えてくれるという福祉サービス(保育所等訪問支援事業)」を活用することも検討してみましょう。

 専門家と園の先生がお子さんの情報を共有し、一緒に手立てを考えていくことができれば、お子さんのストレスを減らし、また発達を最大に引き出すことができると思います。

 なお、このサービスは、公的な発達支援(療育)サービスの一つで、利用料は原則1割(無償化対象児の場合は無料)で受けることができます。なお、この事業の利用には、自治体から発行される「福祉サービス受給者証」が必要となります。詳しいサービス内容や利用方法、お子さんが受給者証の対象となるかどうかについては、お住いの市町の担当窓口にお尋ねください。

まとめ

 発達特性のあるお子さんやグレゾーンと呼ばれるお子さんの園の困りごとについては、次の3つのステップで対応していきましょう。

(1)問題行動の理由を探り、他の表現手段を考える。

(2)園の先生に、問題行動の裏に子どもの伝えたいことが隠れていることがあることを知ってもらう。

(3)発達支援の専門家が園などに来て、先生と連携を図ってくれるサービス(保育所等訪問支援事業)を活用する。

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