太陽の光が力強さを増し、日ごとに春めく時季。そんな春先の気候の移ろいを表す四字熟語に「三寒四温」がある。3日間寒い日が続いた後、4日間は暖かい日が続くという意味だが、本当にこの周期で暖かくなったり寒くなったりするのだろうか。
気象庁のデータを基に、京都市中京区で過去5年間(2016~20年)の2月と3月、「日平均気温が平年値よりも低い日が3日続いた後、平年値を上回る日が4日続く」ことが、何回あったか調べてみた。
すると「三寒四温」の周期で気温が変動したことは全くなかった。そもそも平年値より低い日が3日続いたのは5年間で計7回。その後、暖かい日が続いた日数は、それぞれ1、2、3、5、5、6、6。惜しい形の「三寒三温」「三寒五温」が計3回あっただけで、「四寒四温」や「二寒四温」もなかった。
ちなみに滋賀県彦根市でも同じ5年間で「三寒四温」はゼロだった。
実際は「三寒四温」の周期で気温は変化していないのに、なぜ、この四字熟語が日常になじんでいるのだろうか。
京都地方気象台によると、「三寒四温」は近年、春先の言葉として使われているが、本来は冬の気温変化を示す言葉だという。しかも日本の慣用句ではなく、元々は中国生まれだ。
中国東北部や朝鮮半島では、寒気をもたらすシベリア高気圧がおおむね7日周期で勢力を強めたり弱めたりするため、この周期で気温が変動しやすいという。
一方、東・西日本各地は冬から春にかけ、「冬型の気圧配置で寒い日」→「移動性高気圧に覆われ昼は暖かいが、朝晩は放射冷却で冷え込む日」→「日本海を低気圧が通過し、南風が吹き込んで気温が上昇する日」のおおむね3パターンの天候が、短い周期で繰り返される。
このとき、春の空気と冬の空気が交互に日本付近に流れ込み、暖かい日と寒い日の差が冬に比べて顕著になる。このため「三寒四温」という言葉が私たちの感覚に響きやすいと考えられるという。
3月は、各地に「春一番」や「終雪日(最後に雪が降る平年日)」など、季節の進む指標がいくつも巡ってくる。そして、3月28日は京都市でサクラ開花の平年日となる。